「次の一手」

東京海洋大学の公開講座であるフィッシング・カレッジ(奥山文弥校長)の一部を編集した『サバがマグロを産む日』(つり人社)なる本が、折りからの日本の魚を取り巻く諸問題とあいまって、話題を呼んでいる。
日本人はクジラも食べるが、地球上でクジラの次に魚をたくさん食べているに違いない。一人当たりの消費量で見れば日本はアイスランドに次いで世界第2位だ。どちらの国も世界一を争う長寿国で、さまざまな研究データが示すように魚食が長寿につながることは明らかである。
魚や蒲鉾に多く含まれる不飽和脂肪酸(EPA、DHA)、タウリン(アミノ酸)が、高血圧や動脈硬化を防ぎ、脳卒中や心筋梗塞、ガン、老人性痴呆症などのリスクを下げる。また、DHAは記憶学習中枢を構成する主要な物質で、今まで日本の子どもの情緒が比較的安定し、知能指数が高かったのも魚を多く摂っていたためだといわれる。
しかし、このところ日本人のすべての世代で魚離れが急速に進んでいる。今や、魚は小学生が嫌う学校給食の第1位であり、高校生が嫌う食べ物の2位になってしまっている。刺身や寿司はまだ食べられても、煮魚や焼き魚は骨を取るのが面倒だと特に嫌われる。これは共働きの増加で調理に手間がかかると家庭の食卓で敬遠されがちで、日常的に魚を食べる習慣が減ったことが、大きな要因となっている。
一方、海外では魚の消費量が急速に増えている。過去30年でアメリカは5割、EUでは3割増え、中国は5.3倍にまで増加している。1996年に牛のBSEの人への感染が問題となり、2003年には鳥インフルエンザが発生してから、世界的な魚の消費に拍車がかかった。欧米では健康志向の高まりによって肉食から魚食への需要シフトが起こり、中国では経済発展にともなう食の高級化によって海の魚を食べる機会が増えているのだ。
日本の魚の消費は4割を輸入にたよっている。ところが、各国の魚の需要の増加によって、このところ日本が魚の購入価格で海外勢に「買い負け」することが増えてきた。その結果、ますます魚の価格が上昇し、魚離れが進む悪循環に陥っているのだ。
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