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木村剛の伯楽諌言
「かわいそうだ論」の経済的結末

FJ発行人・木村剛
悲しい予言をしなければならないようだ。古典的な経済破綻――『通貨の堕落』――に向かう道を、日本政府が選択したようにみえる。『通貨の堕落』とは、野放図な財政出動と大幅な金融緩和の結果としてもたらされる手ひどいインフレを意味する。

 これまでも、その兆候はみられたが、日本政府が「プライマリーバランスを2011年までに黒字化する」などと言い張ってきたので、先進国最大規模の財政赤字であっても、急速に膨張する危険性が高くとも、『通貨の堕落』への道はそれほど明確ではなかった。
 しかし、現在は違う。『通貨の堕落』へとつながる。古典的なバラマキ財政が始まったからだ。
 7月28日、福田内閣は、燃料価格の高騰で苦しむ漁業従事者に対する緊急支援を決定し、燃料価格上昇分の9割を補てんすることを決めた。補てん自体の額は80億円だが、無利子融資枠の拡大200億円や積立金の免除65億円などを加えると、総額は745億円。決して少ない支出ではない。
 それにしても、対応が速かった。燃料費高騰の苦境を訴えて全国20万隻の漁船が休漁した7月15日から2週間も経たないうちの対策発動だ。テレビで大きく取り上げられたことが、内閣の危機感を煽ったのだろう。民主党が、バラマキ政策を公言して人気を博しているだけに、自民党も負けてはいられない。次の選挙で負ければ、政権交代もあり得るから、バラマキ本家本元の血が騒ぐ。
 とはいえ、このスピード対応は危うい。燃料高・食糧高に加えて、所得が上がらないというスタグフレーション的な苦境下なのに、一部の業種で苦しむ声が高まった瞬間に、その場しのぎ的な財政出動で対応してしまった。これから、同様の苦境の人々が増えてくるから、同様の要求が次々と出てくる。景況が悪化するにつれて、小出しに財政が出動し、ついには野放図な放漫財政に至るだろう。「漁師がかわいそうだと思わないのか」と批判されそうだ。誤解しないでもらいたいが、漁師の苦境に心を痛めているという点において、私は人後に落ちない。ただ、同様の意味で、ノンバンクから借りられなくなった零細企業はかわいそうだし、銀行からお金が出なくなった不動産業者もかわいそうだ。建築基準法の改悪で破綻した建設業者もかわいそうだし、風俗営業法の強化で商売があがったりの銀座のお店もかわいそうだ。

続きはFJ10月号で


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