鳩山首相が9月にニューヨークで開かれた国連総会で、「2020年までに温室効果ガスを25%削減(1990年比)する」と高らかに宣言した。まさに日本版グリーンニューディールの幕開けである。しかし、この“25%削減”を実現させるためには凄まじいほどの努力が必要になることを政府は忘れてはいけない。
内閣府の試算によると、まず生活上でクリアしなければならないのが、「太陽光発電の数を現在の55倍」「新車販売におけるエコカーのシェア90%」「新築における断熱住宅のシェア100%」というもの。もちろん生活上の省エネだけで“25%削減”が実現するわけもなく、製鉄、化学、セメントの3つの産業において大幅な排出削減が必須となる。製鉄と化学については省エネ技術が顕著で、ある程度は計算できる。ところが、極めて難しいのがセメントである。セメントの精製は炭酸カルシウムから炭素を抜き取る作業で、どうしたって二酸化炭素を出してしまうのだ。つまり、排出を減らすためには生産を抑制しなければならないが、政府はこういう産業をどのように保護していくのかしっかり考えなければならない。
確かにグリーンニューディールを推進すれば、太陽光発電、電気自動車、耐熱化住宅など新しく巨大な市場が形成されることは間違いない。しかし、政府が激変する産業構造にどう向き合っていくのか議論をしなければならないことも事実である。例えば、現在の自動車を100%電気自動車に移行したら、部品の40%が変わると言われている。実際、エンジンがモーターに変わるからボンネットは耐熱性の低いプラスチックでも十分。また、エネルギー制御のための半導体は一気に需要が増えるはずだ。自動車産業ではむしろマイノリティーだった電気部品メーカーが怒とうのごとく流入する。
このような大きなシフトの中で、185万人といわれる自動車産業の雇用をいかに維持するかが当面の課題。政府がきちんとロードマップを整備して取り組まないと、中小企業はおかしくなってしまう。雇用の創出どころか収縮するリスクさえはらんでいる。
さらに省エネという点では、もう一つ重要なポイントがある。今、わが国におけるエネルギーと原材料の輸入は約22兆円に上り、食料については約6兆円である。これは、わが国が30兆円近くの外貨を稼がないと成り立たないということを意味している。これをリサイクルや農業再生により半分の15兆円まで減らすことができたら、国内経済は安定化に向かうに違いない。
つまりエネルギー、原材料を圧縮して非貿易財の価格を上げる。さらには、高付加価値の製品をどんどん輸出して、国内の賃金水準を上げられるような構造にする。結果的に内需を拡大させるというところにもっていく。資源を減らして産業を活性化するという従来とは対極にある、言わば“逆産業革命”が求められる。




