“チャイナ・エコノミクス”元切り上げへ開かれた扉
「中国人の言論もここまでオープンになったのか」──。
胡氏の口から飛び出す言葉に耳を傾けていると、そんな印象を抱かせる。
米誌が「中国一アブない女」と評しただけのことはある。
発展の中で「新しい価値観」を見いだした中国人ジャーナリストと日本に
「合理化」の概念を浸透させた竹中氏が、成長力学について激論を交わした。
構成=吉岡憲史 写真=鰐部春雄

中国政府が実行した財政政策は終わらせるべきか
胡 中国では多くの学者が「今の中国の経済状況はバブル崩壊後の日本によく似ている」と指摘しています。私は日中両国の間にいくつかの共通点、相違点があると思いますが、竹中さんのご意見をお聞きできることは光栄です。
竹中 こちらこそ、このような機会を頂き感謝しています。中国政府は日本政府が犯してしまった〝二つのミス〟を念頭に置けば、バブル崩壊を回避できるでしょう。
一つ目のミスは景気刺激策の実行方法です。当時の日本政府は継続的な刺激策で財政を悪化させ、国際的な不信を招いてしまいました。中国政府はリーマン・ショック後の2009年、大胆な刺激策を実行しました。この政策は効果的に作用していますが、継続的に実行すべきものではありません。
二つ目のミスは、日本政府が極めて短期間のうちに急激な金融引き締めを実行したことです。結果的に金融機関は巨額の不良債権を抱え、バブルは崩壊しました。
胡 財政政策が鍵を握りそうですね。デフレ脱却のために中国政府が実行した財政政策をもう終わらせるべきだと思いますか?
竹中 財政出動を急に止めるのは危険です。ただ、巨額の財政出動を続けることは、財政悪化を引き起こしてしまいます。だから、財政バランスを保ちながら堅実に少しずつ、財政出動の枠を縮小していくべきだと思いますね。
胡 なるほど。ところで中国のエコノミストは、「中国の人口が非常に若い」と言っています。つまり、今後中国において今まで以上に急激な都市化が進んでいくという見方です。エコノミストによれば、中国におけるバブル崩壊はまだ先の話で、需要の拡大を背景に成長は持続するということです。この考え方については?
竹中 今の中国と90年代初頭の日本で最も大きな違いは潜在成長率でしょう。中国の場合、強固なファンダメンタルズを維持していて、潜在成長率は依然として高水準にある。一方、当時の日本経済はすでにダメージを受けた状態で、潜在成長率は非常に低かったのです。そういう意味では、中国は当時の日本と違ってまだ成長可能なステージにいると思いますね。
ただ、政治的見地から懸念していることがあります。端的に言えば、政府による支出は容易に削減できません。国民は政府に持続的援助を期待しているからです。
ところが、政府は「救出政策」と「解決政策」を明確に区別しなければなりません。救出政策は、国民に対して直接的にバラマキを行うことです。解決政策は少し性質を異にします。たとえばインフラ投資は解決政策と言えます。インフラ整備が進めば、潜在成長も手堅い。日本政府は救出政策に巨額の国費を投入してしまった。
胡 救出政策のどこに問題があるのでしょうか・・・



