インド洋上に揺れる“日本丸”
政権が代わり、方針が変わる。
数字の上では国民の圧倒的な支持を得て国家の舵取りを任された鳩山首相。
発足からひと月、鳩山政権は国民とオバマという二者の間で揺れている。
「対等な日米関係」を標榜する鳩山政権が直面した“計算の甘さ”を検証する。
構成=吉岡憲史

日米首脳会談で何も言えなかった鳩山首相
鳩山首相は9月29日、新政権発足後初となる日米首脳会談に臨み、オバマ大統領と初顔合わせを果たした。会談終了後、鳩山首相は「オバマ大統領と協力しながらそれぞれの問題の解決にあたることを確認した」と話した。表情は浮かない。オバマ大統領からは「日米関係を強化、深化させていく」と月並みなコメント。会談は予定されていた1時間を大幅に下回る25分ほどで終了した。
会見終了後に開かれた会見でも鳩山首相は「何らかの信頼関係は築いていくことを確認した。具体的なことは先方からの言及がなかったので、あえて申しあげなかった」と語った。つまり、何も主張できなかった。表情が浮かないわけである。政権発足以降、意気揚々とした言動が目立っていたが、この日ハトがワシにかみつくことはなかった。これについて、日米外交に詳しい東洋学園大学准教授の櫻田淳氏は「個人的に親しくすることを確認しただけ。会っただけで外交的な信頼関係が構築できるなんてあり得ないですよ」と冷ややかに評価した。
日米首脳会談の要旨をみると鳩山首相は環境や核軍縮というテーマでオバマ大統領と手を取り合っていく意向のようだ。しかし、これらが日米外交の中心的テーマになるのかは首をかしげざるをえない。とりわけ環境について言えば、アメリカは1997年に採択され京都議定書で宣言した 「2012年までに7%減(90年比)」を途中で断念し、離脱した国。イニシアチブをとってきた日本政府は顔に泥をぬられた。これはブッシュ政権下での動きだったが、このような“前科”がある国と環境問題で真剣に向き合うことができるのだろうか。
また、核軍縮もオバマ大統領がリーダーシップをとることに各国が協調するという枠組みが既に成立している。日本はその仲間に入ることを改めて示したにすぎない。オバマ大統領も「ありがとう」と言うだろうが、それ以上でもそれ以下でもなく対等な関係を構築するファクターにはなりえない。櫻田氏は「鳩山さんはアメリカと議論しなければならない中心的な問題から逃げた」と指摘した。これでは、外交の基軸を日米関係に置くというのは非常に説得力に乏しいビジョンではないか。
アメリカにとって日本は“One of them”
「日米関係は従属から対等へ」──。民主党のマニフェストにはこのように書かれている。その点において鳩山首相が「東アジア共同体構想」に寄せる期待は大きい。冷戦後の一極集中主義への抑止力を欧州連合ではなく東アジアに見い出されることがその本質と思料されるが、課題は少なくない。
それはアメリカ政府における極東のパートナーは日本から中国にシフトしている感が否めないからだ。このような状況で東アジア共同体を立ち上げても、日本は米中間の渦の中に飲み込まれるだけの話である。
オバマ大統領の視線の先にあるのが、もはや日本ではなく中国というのは「国際関係」では常識的な考え方。知日派の国際政治学者で、米政府に影響力をもつと言われるジョセフ・ナイ氏も昨年発表したレポートの中で「日本はアメリカにとって眼中にない存在、上昇する中国を見るべきだ」との見解を示している。実際、貿易額(表1・2)をみても日本から見たアメリカは重要な相手だが、アメリカから見た日本は“One of them(それらのうちの一つ)”であることは明らか。
なぜ、オバマ大統領は中国を重視しているのか。確かに、10 %前後を推移してきた高い経済成長率や人口12億人の巨大市場は魅力的ではある。しかし最近は別の見方が主流である。それは、積極的に国際貢献に取り組んできた中国に対し、アメリカが喝采を送っているということだ。
国連のデータによると、中国はPKO(国連平和維持活動)に延べ1万人以上の兵士を派遣してきていて、これは国連安全保障理事国の中で最多である。共産党一党独裁国家でありながら、国際的な批判を回避しているゆえんではあるが、アメリカもこの姿勢を高く評価している。
一方わが国はどうか。鳩山政権はマニフェストと反自民政策の姿勢の中で身動きが取れなくなっている感がある。さらに、連立政権内の“友愛”を重視するあまりに国際的に孤立するようなことがあれば、アメリカとの対等な関係など夢のまた夢に終わる・・・
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