「神話」は崩壊したのか
急速に拡大するクリーンエネルギーの市場。
その市場をめぐってし烈な「企業抗争」が繰り広げられている。
その主役は起業して間もない世界のベンチャー。
太陽電池でトップを走り続けてきた日本の神話は、
世界のベンチャーの前で脆くも崩れ去ってしまうのだろうか。
構成=三好達也

4位に後退したシャープの太陽電池
麻生政権が約15兆円の追加経済対策を決めた今春、目を疑うデータが米国の太陽電池市場調査会社・PVニュースから発表された。2007年に独Qセルズに世界シェアトップの座を明け渡したものの、依然としてトップクラスに君臨していたシャープが08年の太陽電池の生産量世界ランキングで一気に4位にまで後退したことが明らかになったのだ。
シャープを抜いて世界2位に躍り出たのは米国のファーストソーラー、3位は中国のサンテックパワーがポジションを維持した。2大大国が太陽電池の市場で一気に牙をむいたかっこうになった。
太陽電池の市場に詳しい日本総研創発戦略センターの井熊均所長は、「急速に拡大する世界市場に追いついていないのが日本の実情。原材料のシリコンが十分に確保できず遅れをとっている」と分析する。
一方、シャープは「製品には絶対の自信をもっている。現状はバブル含みではないか。一時的な順番の入れ替えはあるだろうが市場は最終的に品質を選ぶだろう」とあくまでも冷静だ。シャープが、シェア後退の現実にも余裕を見せるのには、太陽電池の分野で長年にわたり世界をリードしてきた自負があるからだ。
日本は第1次石油ショックの翌年、1974年からサンシャイン計画をスタートさせて、世界に先駆けて国家プロジェクトとしてクリーンエネルギーの技術開発に乗り出した。中東の石油に頼らないエネルギー資源を技術開発によって確保することが目的だったといわれる。
その中でもっとも力を注いできたのが太陽電池だった。産官学をあげた技術開発によって、日本の太陽電池は世界を牽引するまでに成長し、99年以降、国別生産量では世界トップを誇る国になった。その先頭を走ってきたのがシャープだった。
しかし、国別生産量はヨーロッパや中国がせまり、昨年ついに中国に抜かれ日本は世界2位になった(図表1)。太陽電池を取り巻く日本の現状について厳しい見方をする専門家は少なくない。井熊所長も「世界の市場で戦えなければ意味がない。日本の太陽電池は、かつての日の丸半導体と同じ轍を踏む恐れがある」と警鐘を鳴らしている。
グローバル産業に成長している風力発電
国内ではあまり認識されていないが、世界のクリーンエネルギーの主流は風力発電だ。環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長によれば、世界の風力発電の年間出力はすでに約1億3000万kWに達している。原子力の3分の1程度にのぼり、世界全体で4兆円のグローバル産業に発展しているという。太陽光発電の年間の出力実績は2000万kW程度というからけた違いの規模だということがわかる。飯田所長は「年率30%で成長していけば数年で原子力を追い越す可能性もある。しかし、日本の風力発電は完全に地すべり状態だ」と話す。資源エネルギー庁によると、2007年末で発電施設の発電能力の総計をあらわす導入量が、日本の風力発電は世界13位、全体の1.6%にとどまっている。 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のリポートでは「日本の風況が欧米諸国に比べて大気の乱れが大きいことなどから、風力発電施設の利用率が低く、発電コストが相対的に高いというネックが存在する」と日本の気象上の問題を指摘、「出力の不安定な風力発電の大規模導入に伴って、周波数変動などの電力系統の品質を悪化させる可能性が指摘されている」と技術上の問題についても触れている・・・
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