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[特集]米国再生 米国はなぜオバマを選んだのか
久保文明(東京大学大学院教授)

80%超の支持率という過去に例を見ないほど高い期待を
背負った大統領がいよいよ誕生する。米国民はなぜ、
オバマ氏を大統領に選んだのか。米国政治の専門家に話を聞いた。

聞き手=神部 旬(本誌編集長)

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──オバマ勝利の要因は?

久保
 ブッシュ政権の8年間が、国民から否定的に評価されたということでしょう。米国経済は金融危機が問題になる前から非常に悪い状態になっていました。イラク戦争への対応もあまりうまくいっていません。大統領への支持率は30%を切っていました。そういう状況下、大統領候補としてジョン・マケイン氏を担ぎ、3期目を狙わなければならなかった共和党にとって、大変難しい選挙でした。
 しかし、その割にマケイン氏は善戦しました。これは彼の個人的な魅力によるところが大きい。「ベトナム戦争の英雄」、「捕虜になっても屈しなかった男」という個人的な人気と、共和党保守本流と一定の距離を保ってきたことが評価されていました。しかし、金融危機のなか、米大手証券会社リーマン・ブラザーズの破たんに対する対応で、オバマ氏との差が一挙に開いてしまった。
 一方のオバマ氏は、単に「敵失」という理由だけで勝ったのかというと、そうではありません。多くの国民が「この人だから投票したい」、「ぜひ当選させたい」と思っていました。選挙戦を通じて、感情的にキレたことがない彼の冷静さや、政策についての理解力などから、オバマ氏が大統領になることについて、多くの国民が不安を感じなかったのではないかと思います。また、国民はアフリカ・ケニア出身の父親と米国・カンザス州出身の白人の母親の間に生まれた、ある意味、特異な出生を持つ人物を、自分たちの大統領にすることに意味を見出していました。
 そして、オバマ氏の高い弁舌力。それもただしゃべり方がうまいということだけではなく、「米国民は一緒になって協力することができる。国家を変えることも可能だ。事実、米国はそうして変革してきた。英国から独立し、南北戦争で奴隷制を廃止し、公民権運動では、南部における黒人差別の撤廃に黒人と白人が協力した。今、米国は分断されすぎている。だから一つにまとまることが必要で、自分にはそれができる」というメッセージに多くの人が共感しました。
 マケイン支持者には、選択肢がなくて、仕方なく彼を支持したという人が多いのですが、オバマ支持者には「ぜひとも彼を当選させたい」という人が多かったのです。

──リーマン・ブラザーズの破たんがオバマ勝利を決定付けたのでしょうか?

久保
 大きな引き金になったことは間違いないでしょう。すべての世論調査で、多くの人たちがオバマ支持に回ったという結果が出ています。ただし、業界4位の証券会社が破たんしたショックだけではなく、マケイン氏のバタバタした対応が、その時の気分で、衝動的に物事を決定する人だという印象を与えてしまった。
 しかし、あくまでも推測ですが、その「リーマンショック」がなかったとしても、副大統領候補のサラ・ペイリン氏の問題が噴出していましたし、いろいろ迷っても最終的に経済で判断する国民が多いことを考えると、オバマ氏が選ばれたのではないかと思います。

──ペイリン氏を副大統領候補に選んだことが失敗だったという指摘があります。

久保
 本当はジョー・リーバーマン上院議員(コネティカット州・無所属)を選びたかったようです。ただし、共和党の保守派がそれを許容しなかった。結局、マケイン氏は共和党保守派との緊張関係を解きほぐすことができなかった。穏健派のマケイン氏は共和党の中では異端であって、そもそも彼が共和党の候補者選びで勝ち抜いたことが奇跡に近いのです。結局、マケイン氏は指名を獲得するために、自分自身を犠牲にしなければならなかった。保守派に対する究極の妥協がペイリン候補だったということです。ペイリン氏以外を選べば、党大会で保守派が異議を申し立てるというような動きがあったようで、そうなると党大会は台無しになります。マケイン氏はそれを避ける必要があった。ここにマケイン氏が敗北した根本的な原因があったと思います。
 支持率などをみると、その時点でオバマ氏にかなり遅れを取っていました。「窮余の一策」のような面はあったと思います。しかし、オバマ氏の経験不足をずっと叩いてきたマケイン氏が、明らかに経験不足の人物を副大統領候補に選んだ。彼自身は72歳と高齢ですし、「素晴らしい」と多くの国民は素直に喜べない、ちょっとシニカルな選択であり、金融危機への対応と同様に、衝動的に物事を決める人物だという印象を国民は持ったと思います。

──今回の選挙結果は「オバマ圧勝」ですか?

久保
 得票率が53%でしたから、「圧勝と呼ぶには少し弱い」と私は思っています。圧勝とするには55%以上が必要でしょう。しかし、民主党大統領候補者としては久しぶりに50%を超えました。これは1974年のジミー・カーター大統領以来です。あるいはオバマ氏はイリノイ州選出の上院議員ですから、北部出身の民主党候補者で考えると、ジョン・F・ケネディー大統領以来です・・・


続きはFJ3月号で


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