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[特集]米国再生 世紀の大統領バラク・オバマ就任
迫られる難しい舵取り

深まる不安、高まる期待

2009年1月20日、ついに黒人初の大統領が誕生した。
世界中から“CHANGE”への期待を集めるバラク・オバマ大統領は、
荒波の中に突入するアメリカという船の舵取りをうまくできるのか。

構成=FJ編集部


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バス座席が区別された時代から半世紀

 1955年、アメリカ合衆国。奴隷開放宣言から約100年たっていたにもかかわらず、バスなどの交通機関やレストラン、学校など公共の場所での人種隔離を定める法律が施行されていた。アラバマ州モンゴメリーで12月、市バス前方の白人優先席に座っていた黒人女性のローザ・パークスさん(故人)は、白人に座席を譲るよう要求されたが拒否。そのために逮捕された。黒人たちは怒り、青年だったマーティン・ルーサー・キング氏らが中心となって抗議運動が高まっていった。
 後に“公民権運動の母”と呼ばれるパークスさんの逮捕から8年後の63年。キング牧師らの呼びかけで、人種差別撤廃を求めて行われたワシントン大行進に20万人以上が参加した。このとき、あの有名な演説が行われた。「I have a dream(私には夢がある)」だ。
 キング牧師はこう訴えている。「私には夢がある。今、差別と抑圧の熱がうずまくミシシッピー州でさえ、自由と正義のオアシスに生まれ変わる日が来るという夢が。私には夢がある。私の4人の小さい子どもたちが、肌の色ではなく内面でこそ評価される国に住める日が、いつか来るという夢が」

 それから45年。「わずか」と見るか「ようやく」と見るかはわかれるかもしれないが、ともかく世紀が変わり、パークスさんの逝去から約3年が経過した2008年11月4日。ハワイ出身のバラク・オバマ氏が、黒人として初めて合衆国大統領になることが決まった。同日深夜、イリノイ州シカゴのグラントパークで、20万人を超える支持者の前に姿を現したオバマ氏は高らかに凱歌を揚げた。「Change has come to America(アメリカに変化が訪れた)」
 米CNNが08年12月に実施した調査(1013人対象の電話調査)によると、オバマ氏の支持率は同月上旬の調査から3ポイント上昇し、82%となったという。ブッシュ前大統領が1期目の就任を目前に控えていた時期の調査で支持率65%、その前のクリントン氏の時は67%だった。オバマ氏への期待の高さは際立っているといえるだろう。

09年世界経済は0.9%成長
日米欧はマイナスの見通し

 オバマ氏に期待を寄せるのはアメリカ国民だけではない。07年夏に顕在化したサブプライムローン問題、08年秋のリーマンショックなどをきっかけに、世界各国の経済は大きなダメージを受けた。新聞や雑誌では「大恐慌」の文字が躍るなど閉塞感が漂う状況で、「change(変化)」を求める声は世界各国からあがっている。オバマ氏への期待の高さは、世界経済の深刻さの裏返しでもある。
 2009年の世界経済は、成長率が徐々に悪化するとともに、世界全体の貿易規模が26年ぶりの低水準に落ち込む──。
 これは世界銀行が08年12月9日に発表した年次報告「世界経済見通し」の内容だ。報告では、09年の世界経済の成長率は前年比0.9%にとどまり、世界全体の貿易規模は同2.1%減になると見ている。途上国は4.5%成長と予測した一方で、先進国は0.1%減の見込み。これに先立ち6月に発表していた見通しでは、世界経済の成長率を3%、途上国の成長率を6.4%としていた。
 またIMF(国際通貨基金)が08年11月に発表した09年の見通しでは、世界の実質GDP(国内総生産)成長率を2.2%としていたが、アメリカについてはマイナス0.7%、日本をマイナス0.2%とするなど日米欧はともにマイナス成長と予測。IMFは「第二次世界大戦後に先進国全体がマイナス成長に陥ったことはない」とした。1月には、下方修正した見通しが公表されそうだ。

金融業・自動車業界の苦悩

 世銀やIMFによる見通しが相次いで下方修正されているのは、ここ半年間で事態が急速に悪化しているからだ。特に、世界的な金融不安の震源地となったアメリカでは、金融業や自動車産業の傷みぶりにはすさまじいものがある。
 金融市場が過去数十年で最悪の年だったということには、誰も疑義をはさまないだろう。ベアー・スターンズはJPモルガン・チェースに買収され、メリルリンチはバンク・オブ・アメリカの傘下に入った。リーマン・ブラザーズは破たんし、AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)の経営は実質的には破たん、生保事業を売却して損保事業に専念するという。生き残った投資銀行でも、ゴールドマン・サックス、モルガンスタンレーはともに米FRB(連邦準備制度理事会)の支援が受けやすいよう銀行持ち株会社へ業態を転換することになっている。
 米政府・FRBの支援を必要としているのは、震源となった金融業界だけではない。アメリカを代表する産業のもう一角・自動車もそうだ。米政府は経営危機に陥っているGMなどを救済することを決めている。
 自動車はすでに売れなくなっている。アメリカの調査会社オートデータが1月5日に発表した統計によると、昨年12月の新車販売台数(乗用車、軽トラック)は前年同月比36%減の89万6124台。10、11月よりはよくなっているが、100万台割れは4カ月連続という。08年通年の販売台数は前年比で18%減の1324万4018台で、92年以来最低の水準という。この厳しい状況は当面続くというのが関係者の一致した見方だ。

「タキシード姿の気取った人間が無料食堂に現れるようなもので、少しばかり釈然としない」──。11月19日の米下院金融サービス委員会の公聴会で、民主党のアカマン下院議員は、ビッグ3のトップがプライベートジェット機でワシントン入りしていたことを引き合いにこう述べた。シャーマン下院議員が「自家用機は今売って、商業便で帰ろうという人は挙手を」とたずねるも、トップ3人は無言、無反応。その後、米上院はGMとクライスラーへの緊急つなぎ融資法案を一度否決した。経営者のこうした姿勢が現在の事態を引き起こす要因になったのなら、当事者の危機意識の低さが疑われても仕方ない。本当にビッグ3が、自動車業界が再生するのか不安にもなってくる。
 信用収縮で個人・企業ともに借金がしにくくなったアメリカは消費が落ち込み、日本の自動車メーカーにも暗い影を落としている。北米で強いトヨタが09年3月期に赤字になる見通しであることでも証明される。自動車が日本にとっても大きな産業の柱であることは言うまでもない。これが傷むのは、国の財政にも影響を与える。財務省が発表した08年11月の税収実績を見ると、一般会計税収は7兆1232億円で、前年同月比7.2%の減少。自動車業界など企業の業績が悪化。法人税収が11.6%減ったことが響いた・・・


続きはFJ3月号で



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