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[特集]米国再生
オバマ・バブル崩壊後も有効な投資が必要だ

スティーブン・クレモンス
ニューアメリカ財団米戦略企画部長・上級研究員

「国民から高い期待を受けているが、成功する可能性は大変に低い」
日米関係にも造詣の深い政策のプロはオバマ政権の前途を懸念する。
取材・翻訳・構成=池原麻里子

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成功する可能性は低い

 バラク・オバマ新大統領は最悪の状態にある国際関係と経済をブッシュ前大統領から引き継ぐことになる。米国民のみならず、世界中の人々から高い期待をオバマ氏は受けているが、彼が成功する可能性は大変に低い。
 しかし、彼は自信に満ちあふれ、非常に有能なチームを抱えている。オバマ氏にとって必要なのは、ゲームのルールを根本的に変える大胆な行動だ。経済面では、国際的な経済の枠組みを改革することであり、国内的には一般市民の生活を向上させることだ。
 オバマ氏はブッシュ政権のディック・チェイニー副大統領から学べる点があると私は考えている。それはチェイニー副大統領の統治手法である。ブッシュ大統領の決断方法、思考回路は「ミステリー」だったから、側近たちはいろいろと「暗中模索」するはめになった。しかし、チェイニー副大統領の思想は首尾一貫しており、自分のアジェンダ(政策課題)を達成するために、政権のあちこちに同じ思想の人物たちを配置していたため、実際に指示を下さなくても、自分の政策は思い通りに達成された。オバマ氏はこの手法を模範にすべきだ。
 細かい点まですべて自分でマネジメントしようとして、政権が麻痺状態に陥らないように注意しなければならない。オバマ氏がスタンスを左から中道にシフトしたため、民主党左派は困惑している。したがって、「変革(チェンジ)」アジェンダの原則とそのための具体的な政策を早く明らかにするように、私はオバマ政権移行チームにアドバイスしている。

オバマ政権の最優先課題

 オバマ氏がすべきことはあまりに多いのだが、まず何よりも国内の経済危機、そして米国発の国際的な経済危機、米国型資本主義に対する国際的な不信を解決することである。国際金融制度全体に影響を及ぼしてしまった今回の金融危機が根本的な問題なのではない。確かにサブプライムローン問題で地震が起きたが、実は「サンアンドレアス」断層(注1)は不均衡な国内消費、生産、貯蓄なのである。これが世界的な金融不安を生み出しているのだ。
 英国のゴードン・ブラウン首相は中国やサウジアラビアに世界金融危機対応の支援策として、国際通貨基金(IMF)への資金提供を要請するなど、建設的に行動している。ブラウン首相やフランスのニコラス・サルコジ大統領のように、オバマ氏もこの問題に対して建設的な役割を果たすべきだ。
二人とも根本的な問題に対応しているわけではないから、オバマ氏のリーダーシップが必要だ。
 残念ながら、世界的な金融危機において、日本の麻生太郎首相はまったく存在感がない。景気刺激策とか、東南アジア諸国の救済とか、その程度の案では不十分だ。日本はその経済力を活かし、国際経済の「ステークホルダー(利害関係者)」として、もっとできることがある。いつも米国からの指示を待っているような姿勢は不健全だ。米国は自信喪失状態にあるから、日本、ドイツ、中国や湾岸諸国は協調して、経済改革を実行し、輸出依存型ではなく、国内需要型の経済成長の割合を増やすなどの努力をすべきだ。

自由主義経済の終えん

 米国の金融機関の信用は失墜したが、銀行は“too big to fail”(大きすぎて潰せない)という状況なので、政府の市場介入が米国でも起こりつつある。ドイツも日本の不良債権に類似した問題を抱えており、その点では、「米国はドイツや日本に似てきた」といえるかもしれない。
 しかし、米国は日本の日本銀行や財務省より、ずっと素早く問題の規模を認識し、多額の資金を投入した。利下げで政策金利は「日本並み」になった。日本、ドイツ、中国と米国の大きな違いは、これらの3つの国が生産過剰、需要過少であるのに対して、米国は需要過剰、生産過少であることだ。
 オバマ政権は経済刺激策として、膨大な投資を検討している。しかし、その主体となるインフラ投資には賢明なやり方とそうでないやり方がある。ブッシュ政権は現在、融資保証などの手段で、金融市場の流動性確保を最優先しているが、これにはモラルハザードが起きる恐れがある。自由主義経済がターボエンジンのような役割を果たし、米国経済は十分に潤って、国民全員が恩恵を享受していた。しかし、結果的には一部の富裕層に富が集中するという事態を招いた。オバマ政権は労働組合、企業、資本、政府の関係を変えて、経済成長に国民全員が参加できるようにしなければならない。
 米国のインフラは確かに整備を必要としている。道路、橋、学校は老朽化し、通信インフラも遅れている。アダム・スミスが指摘したように、経済には市場に任せておけばよい分野と、そうではない分野がある。市場に任せられない分野については政府の介入が必要で、インフラはその一つなのだが、これまで放置したため、ひどい状態になってしまった。オバマ政権は米国経済に多くのリターンをもたらす賢いインフラ投資をすべきだ。オバマ・バブルは当然ながらいつか破裂する。だから、その後にも残るような投資をしなければならない。それはIT、クリーン・エネルギーなどへの投資を意味している・・・

続きはFJ3月号で


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