“ロシアの魅力は無数にある”
金融危機から蘇った国は日本のパートナー
世界の金融市場が動揺する中、ロシアはこの危機を乗り切れるのか。
中央銀行副総裁を務めた経験を持つトルシン氏に話を聞いた。

ロシアには何でもある
──日本ではロシアに関する情報が不足している。
日本はロシアにとって21世紀の大切なパートナーであり、これからさらに情報発信に努めたいと思います。いまロシアが日本から学びたいのは日本人のメンタリティであり、日本の製造業の技術・ノウハウ、そして価値観です。企業の環境対策などもそうです。
ロシアは資源に富み、失業も発生しにくいため、何でも取り組める立場にあると考えています。あとは、ビジネスや生き方に関する価値観が変われば、いままで以上によくなるでしょう。この点で資源に乏しい日本が世界で常にトップを争っていることに学びたいと考えるわけです。
具体的には、日本企業が製品の組み立てをロシア国内で行う段階まできています。将来は部品製造もできるようにしたいですね。
──ロシアに投資する際に気をつけることは何でしょう。
経済の魅力についてはいくらでも語れます。ロシアにおけるビジネスで、国際的な司法の場に判断がゆだねられるケースもあることは事実ですが、外国人投資家を保護する法律もあります。
また、ここ5年ほどの間では日本企業との間で大きな紛争などなかったはずです。サハリンでの天然ガス開発の問題も短期間で落ち着きました。少なくともロシアは安定した関係を望んでいます。
──金融分野がロシア経済に果たす役割について、お考えを聞かせてください。
社会主義から資本主義に移行してからまだ短く、たったの18年しかたっていません。人間にたとえれば18歳。ようやく世界で自信を持って歩けるころです(笑)。
幸いにも金融危機はロシアの資本主義が子どもだったときのことであり、いい免疫になっています。
あの金融危機から10年、国内の金融分野の強化に努めてきました。現在では外貨準備高が世界第3位で、政府系ファンドには準備基金と国民福祉基金の2つがあり、双方ともしっかりしています。
このほかに個人の預金保護システムも構築しています。このシステムはロシアにおけるおよそ9割の口座に適用されるもので、保護される金額の上限は現在の40万ルーブルから今後70万ルーブルまで引き上げられる見通しです。こういった措置により、金融分野の安定を図っています。
米国発の金融危機の影響は受けていますが、現時点で銀行分野も個人もパニックにもなっていません。対応策としては、先ほどの基金を活用することも考えられ、ロシア市場を安定させる力はあると思います。
ロシア=ムスリムの国
──モスクワを金融センター化する構想があると聞いています。
具体的にとるべき方法は多数考えられますが、ロンドン、ニューヨーク、東京などと関係を強化することに加え、まずは少しずつルーブルを国際通貨に押し上げるべく、資源輸出の際はルーブル決済を進めていきます。
「ロシアは偉大なムスリムの国」とプーチン首相は言いましたが、イスラム銀行をロシアにつくる構想もありますね。ロシアのムスリム人口は約2000万人。年々人口に占める割合は拡大する傾向にあります。
いま米国からイスラム系のマネーが逃避していますが、その行き先が求められているという点ではチャンスがあります。
──株式市場の現状についてどう考えていますか。
証券業も一種の文化の問題と思いますが、現在は市民が株式投資などに取り組んでいるケースは多くありません。
証券口座を持って売買する個人投資家はわずか85万人です。ですからほとんどの人がテレビを見て、国際金融危機と聞いても、「何が起こっているのか、何の株が落ちているのか」といったこともわからないでいるのではないかと思います。
とはいえ大企業がアンダーパフォーム(株価が株式市場の平均的な収益率を下回ること)の状況にあります。今後はしっかりと財務状況の評価をする必要があるでしょう・・・
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