ミセス・ワタナベにもぜひ投資してほしい
在日ロシア通商代表部の主席として、両国間の経済交流の
第一線で活躍する知日派のラブレンチィエフ氏に、
ロシアの“今”と旬を迎えつつある投資の魅力を語ってもらった。
構成=山本雅幸/玉居子精宏 写真=鰐部春雄

成長ロシア、すべてに
ビジネスチャンスあり
在日ロシア通商代表部の設立は1957年にさかのぼります。本国の管轄は「経済発展貿易省」で、現在では旧ソ連時代と異なり、貿易実務にはタッチせず、経済交流のための制度の整備、投資・ビジネス環境の改善などに注力しています。
近年の大きな成果としては、2007年に両国間の貿易高が213億ドルに達したことでしょうね。これは旧ソ連時代を含め過去最高の数字です。
貿易の内容を見ると原料が主で、例えば、非鉄金属のロシア企業、「ロシア・アルミニウム」(ルサール)は、日本に輸入されるアルミ原料の6割を賄っています。
また燃料関係では石油、石炭があります。来年からは、サハリンからLNG(液化天然ガス)が日本に輸出されます。
まだまだ日常生活で目に見えるものが少ないので、“ロシア”の存在感は薄いかもしれません。けれども両国の経済交流は年を追うごとに緊密化しているのは事実です。
一方で、日本からの輸出は機械・設備が主です。以前は家電が強かったのですが、ロシア国内のモータリゼーションのため、今では自動車(中古車含む)が大きな割合を占めていますね。
例えば、ニッケル大手の「ノリリスニッケル」では、人材育成向け用の訓練施設を日本から入れようとしています。
通信関連では、「ロステレコム」と「トランステレコム」の2社が、日本のNTT、KDDIと組み、両国の既存のネットワークをドッキングして大規模な通信事業に取り組むことが最近発表されました。
また、日本のノウハウを得たいと考えるロシアの企業は多いのです。
ロシアは今、国家的な方針として、「競争力向上」を掲げています。人的資本の拡大もそのひとつで、医療や教育がかかわってきます。
もうひとつは投資を刺激して、インフラ整備を進めることです。鉄道分野、有料自動車道路の分野が考えられます。日本の有料道路の運営システムは世界的にも優れていますよね。
プロジェクトを共同実施して、全体のオペレーションまで日本のノウハウを取り入れることも検討しています。
「両国間でチャンスのないビジネス分野はない」。そう言っても過言ではありません。
ロシアは現在イノベーション社会の創出を喫緊の課題として揚げており、これは新技術の開発からマーケティングまでを含み、「省エネ」なども対象としています。
ロシアは資源大国ですが、エネルギーを効率的に使わなければいけません。
エネルギーの消費効率は、日本に比べると、ロシアは格段に悪いのです。ここに日本の省エネ技術がほしいところです。
すでに企業進出は本格化
サンクトペテルブルク市で06年、「第1回ロ日投資フォーラム」が開催されました。日本側では経済産業省が主導し、ロシアNIS貿易会、ジェトロ、経団連が加わったイベントです。
このとき、アメリカ系の調査会社のリサーチ結果を引用して、「ロシアに入るための壁は高い。だが、それを越えたときに得られるリターンは非常に大きい」との声明が発表されました。
これは事実です。ロシアは、資源の中で持たざるものはありません。労働者のスキルは高い。旧ソ連時代からの企業も復活し、経済は動きに動いているところです。
「ロシアに関する情報は少ない」と思う方も多いでしょう。確かにロシアが一般の人の目に触れる機会は限られています。
しかし専門家の間ではロシアの可能性は広く指摘されており、日本の大手企業の大半が、ロシアですでにビジネスを展開しているのです。
松下電器産業は液晶テレビ組み立て工場を、コマツはトラック工場を、自動車ではトヨタも工場を構えており、日産、三菱自動車なども進出済みです。
今後はロシアの住宅市場に注目してみるといいでしょう。次期大統領のメドベージェフ第一副首相は先日、「毎年1人当たり1㎡増やす」とコメントしました。
ロシアでは今、人口の3分の1に当たる約4000万人分の住宅が、改善の必要に迫られています。
1家族当たりの住居面積は平均80~100㎡。これを1億4000万人の人口でかければ膨大な面積になりますね。
もちろん住宅建設には道路整備、建築資材、建機、輸送手段など多くのものが必要とされます。
これに対して民間企業が取り組むわけで、非常に大きなチャンスになるでしょう。
さらに国家的に推進する「極東シベリア開発プログラム」では、学校、病院、通信の発展に取り組みます。
また2012年にはウラジオストクでAPECが開催されます。建設ブームが間違いなく到来するでしょう。14年のソチ五輪と併せて期待が持てるところです。
加えて政府は近年ナノテクにも力を入れています。「ロスナノテクノロギー」という公団を設立し(07年)、50億ドルを拠出しました。ここから国の支援を受けたナノテク・ベンチャー企業が輩出されることでしょう。
国の規制は少ない
ロシア市場の自由度は高い
民間の活動に国は必要以上に干渉しません。外国資本の参入はかなり進んでいるのです。
日本のJT(日本たばこ産業)はロシアたばこ市場で好評を博しており、もう国内企業が対抗できないくらいのプレゼンスがあります(笑)。
ビールにしても外国企業がロシアブランドで製造販売している例があります。
小売りを中心に自由度は高く、規制を脅威視する必要はありません。
確かに航空産業、造船、原子力発電、軍事産業には、国家介入が求められています。
〝戦略物資〟といわれる資源についても同様です。石油、天然ガス、石炭、金、銀、ニッケル、銅などがそうです。
これらの分野の企業で株式を10%以上取得する場合、届け出をして当局の検討を受けることを必要とする法律案をいま、国会下院で審議中ですが、これも介入は法律の範囲で行うことを定めるものであり、“無法”を認めるものでもありません。
つまり規制はあくまで「安全保障」、「国防」のために行われるのです・・・



