
少子高齢化、人口減少、円安、そしてインフレの到来……。
こうした課題が深刻化するであろう今後、果たしてどのような投資・資産運用をすれば
自分を守ることができるのか。神戸孝氏は、独立系のFPとして活躍するほか、
講演やセミナーで金融機関の担当者や独立系FPに資産運用アドバイスについて講演する
“プロに教えるプロ”。その神戸氏にインフレに備えた資産運用の心得を聞いた。
人口減少時代の資産運用法
「現役時代なら収入増で対応できるかもしれませんが、大変なのはリタイア後です」――。インフレに備えた資産運用についての問いに、神戸氏はこう答える。物価が上昇しても、給与収入があるうちは、収入を増やすよう努力することで対応は可能かもしれない。
しかし、サラリーマンにとって給与収入が途絶えるリタイア後は、そうもいかなくなる。その後の収入として浮かぶのは年金だ。では、将来の生活を左右するこの年金について、「自分はしっかり理解している」という人はどれくらいいるだろうか? たとえば神戸氏がいうように、年金の支給額の変動が「マクロ経済スライド方式」に変わっていることを理解している人は意外と多くない。
2005年4月以前、年金の支給額は、物価の上昇にあわせて変動される「物価スライド制」だった。しかし今は、「マクロ経済スライド制」。支給額の変動率は物価上昇率と同じではなく、「物価上昇率-0.9%」に過ぎない。たとえば45歳の人が年金をもらうまでの20年、毎年の物価上昇率が1%だったとすれば、20年間で物価は約20%上がることになる。一方、年金支給額は2%しか上がらない計算だ。この方式が導入された背景には、労働力人口の減少と年金受給世代の平均余命の延長が想定されていることがある。
実際、日本の人口は減少し始めている。国立社会保障・人口問題研究所発表の人口動態予測によると、2055年には人口が9000万人を切る見込み(長期の合計特殊出生率1・26の場合)。
こうした社会の変化にともなって、以前は有効だったある投資手段の魅力が損なわれつつある。それは「不動産の所有」だ。
個人投資家とプロ(機関投資家)を比較した時、個人投資家が有利なのは時間を武器にできること。途中の経過、期間損益を追求されることがないからだ。そこで、「いつか値上がりするものに投資し、保有するのが一番成功の確率が高い方法」(神戸氏)といえるが、以前の日本では、それが不動産だったのだ。
たしかに人口が増え続け、経済成長も右肩上がりだった高度経済成長期、日本には「土地を持っていれば大丈夫」という“不動産信仰”のような考え方が浸透していた。しかし、それはあくまで過去の話。人口が減れば、必要とされる土地は減る。神戸氏も「今や、必ずしも不動産の所有が長期で見て有効とは限らない」という。
基本のポートフォリオは
それでは、人口が減り、インフレが進むと見られるこれからの時代に効果的な資産運用法とは何だろうか。神戸氏は、「まずは、『資産運用とはリスクをコントロールすること』という点を踏まえておく必要がある」と指摘する。
投資や資産運用では、リスクとリターンの関係を考慮することが欠かせない。自分が取れるリスクがどれだけか。希望するリターンはどれくらいか。それなくして運用方法が決まらないことは常識といっていいだろう。
だがリターンをコントロールするのはなかなか難しいことだ。というのも、投資した商品の将来のパフォーマンスがどうなるかなど、誰にもわからないからだ。
しかし、「リスクつまりブレ幅はある程度コントロールできる」と神戸氏。リターンとリスクは裏腹の関係にあるので、リスクをある程度コントロールできれば、リターンも“ある程度”はコントロールできるということになる。
資産運用を始めるにあたっては、この「リスクをコントロールする」という視点を忘れずに、まず目標とするリターンを想定することだ。神戸氏は、「たとえば『60歳時点で1億円作るには何パーセントでの運用が必要か』というところからスタートすべき」と提案する。目標金額を達成するために、現在の貯蓄額と、今後の定期的な収入から、投資にあてられる金額を算出し、「それを何パーセントで運用すれば目標に到達するのか」を見極める。その目標とする利率が年7~8%程度までであれば、“国際分散投資”が最初の選択肢となりうる。
国際分散投資を考える上で大切なのは、“組み合わせ”だ。「『いかに勝つか』ではなく『いかに負けないか』を考えるべき。そのためには、できるだけ“値動きが違うもの”を組み合わせること」と神戸氏は言い切る。
ポートフォリオの基本は、国内外の株と債券の4つの伝統的なアセットクラスへの分割だ。神戸氏も、「4分割ポートフォリオなら負けにくい運用が実現できる」という。その理由は、「組み合わせる比率をうまくコントロールすればという条件はつくが、円とドル、株と債券という、値動きが異なるアセットを組み入れているからだ」と自信を込める。
長い将来にわたる世界経済の成長率など誰にもわからない。神戸氏は、「今以上に成長しないと思ったら、株式への投資はやめたほうがいい」という。ただ、世界規模での経済成長が続くなら、リスクコントロール次第で一定割合の“果実”を得続けることも可能だ。
外貨建ての資産を持つ狙いは、まさに円建ての資産とは違った値動きをする商品を持つことで、リスクを分散するところにある。
長期でみれば、ファンダメンタルズの強弱を反映するのが、その国の為替レート。日本と海外の今後の成長性を比べると、円高よりは円安の方向む進む可能性のほうが大きそうだ。となると、円建ての資産に集中させることは得策とはいえない。「むしろ、外貨建て資産を持つほうが為替リスクが小さいという時代に変わっていると気づいたほうがいい」と神戸氏は示唆する・・・



