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「円安・インフレ・高金利」が日本を襲う理由
櫨 浩一(ニッセイ基礎研究所経済調査部長)インタビュー

少子高齢化、人口減少、貯蓄率低下がもたらす脅威

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逆ピラミッドの
マイナスパワー

 貯蓄を行っているのは、基本的には子供や高齢者以外の、現役で働いている世代。高齢化が進めば、現役で働き貯蓄を行う世代の人口は減少し、代わって貯蓄を取り崩して生活する高齢者の人口が増加していく。1950年の日本の人口ピラミッドを見ると、若い層ほど人口が多く、まさにピラミッドのような三角形をしていた(グラフ2)。しかしその後は出生率の低下が続いたため、2000年の人口ピラミッドはすでに下がすぼんだ壷のような形になっている。さらに2050年には、人口ピラミッドは、下のほうにいくほど細い、ピラミッドをさかさまにした逆三角形に近い形になってしまう。貯蓄を取り崩す高齢者と貯蓄を行う現役の勤労世代との人口比は、2050年には1対1.5にまで低下する。
――今後、貯蓄率が回復する可能性はないのか?
 今年度以降は団塊の世代が定年退職を迎えるため退職金が増え、金利も徐々に持ち直しているので、貯蓄率は徐々に回復する可能性がある。ただし、この現象も一時的で終わるだろう。長い目で見れば高齢化の加速で、貯蓄の取り崩しが進む。中長期的には団塊世代の引退が、日本の貯蓄率低下に拍車をかけるのは明らかだ。
――貯蓄率はいつゼロになる?
 2020年には家計貯蓄率がほぼゼロになると予想している。これに先立って、2010年代の後半には経常収支が赤字になり、円安圧力が強まるだろう。
――家計貯蓄率がゼロになると、経済はどのように変化するのか?
 貯蓄率がゼロとは、その年に稼いだ収入を、すべて消費してしまうことを意味する。個々の家計でも、収入のすべてを日々の生活に使ってしまえば資産を増やすことができないように、日本経済全体でも、その年に生産されたものがすべて消費に使われてしまえば、工場の設備投資や、住宅や橋などのストックを増加させることはできない。
 企業が市場から調達したり、銀行から借り入れたりする資金は、もとを辿れば家計が収入の一部を消費せずに残しておいた貯蓄だ。家計貯蓄率の低下によって家計の余剰資金がなくなれば、企業は資金を調達できなくなり、設備を増やして生産を拡大することはできなくなる。

現代にも生きる
米百俵の精神

――消費の割合が増えると、そんなに単純に投資が減るのか?
 この関係は、米の生産に例えるとわかりやすいだろう。米だけを作っている社会で、毎年同じだけの米を収穫するためには、その年にまいた種モミと同じ量だけ、来年に種モミを残す必要がある。10キログラムの種をまいて100キログラムの米を収穫したら、10キログラムは来年のためにとっておかなければならない。この場合、この社会の家計の可処分所得は米90キログラムである。
 仮にこれまでは米の消費量が85キログラムだったとすれば、5キログラムの種モミが貯蓄されて投資に向けられ、翌年は15キログラムの種モミを使って150キログラムへと生産を拡大できたことになる。しかし、家計貯蓄率がゼロになるということは、可処分所得に当たるこの90キログラムの米を、全部食べてしまうということを意味する。
 ちなみに、家計貯蓄率がマイナスになって、95キログラムの米を食べてしまえば、来年の種モミは5キログラムになり、収穫量は50キログラムに減少してしまう。これを続けていくと、昨年から今年、今年から来年へと残していく種モミの量が次第に減っていき、収穫できる米の量も、だんだんに減ってしまう。
――10キログラムの種モミは、現実の経済では何に相当する?
 今に当てはめれば、企業などの「更新投資」に充てる資金に相当する。毎年同じだけの米を生産するには、同じ量の種モミを残さなければならない。同じように、工場の建物も機械も、使っているうちに壊れたりすり減ったりしていく分を補う設備投資を毎年していかないと、前年と同じだけの生産を続けていくことはできない。
 ところで、国内総生産(GDP)の“総”とは、壊れたり古くなったりしたものの更新は考慮しておらず、国内で生産された量をそのまま計算してあるという意味。米の生産量を維持するためには、100キログラムの米の収穫があっても最大で90キログラムしか消費に回せなかったように、GDPが減らないようにするためには、GDPのすべてを消費に使ってしまうわけにはいかない。
 米を生産する経済では、消費の割合を90%以上にすると、来年の米の生産が減るという関係があった。換言すれば、設備投資に当たる種モミの確保には、GDPの10%を支出する必要があった。これと同じように、家計貯蓄率ゼロの経済でも来年以降の生産を維持するためには、企業の設備投資や政府による公共投資を毎年かなりの規模で行わなくてはならない。
 今の日本でも、現在の設備ストックを維持するためだけに、かなりの投資が必要になっている。GDPのうちのかなりの部分が、こうした既存の設備ストックの維持・更新のために使われており、純粋に工場設備や社会資本の増加に使われている純投資部分の割合は小さくなっている(グラフ3)。
――純投資は今でも減っている?
 設備投資が回復基調にあるため企業は借り入れを増やし、足元では純投資が若干プラスになりつつあるが、昔のようにほとんどが純投資という状態に戻ることはないだろう。過去のように家計から資金を集められなくなるので、新規の設備投資ができなくなり、この面からの日本経済の生産能力増加が望めなくなることは確実だ・・・


続きはFJ1月号で


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