不動産・株・外貨建て商品による資産防衛

インフレは過去の産物か?
――なぜインフレに警鐘を?
インフレの要因はさまざまだが、いくつかの基本的なパターンがある。まず景気が良く、需要が供給を上回る場合。もうひとつは原材料価格が上昇して製品の製造コストが上昇したり、賃金が上昇してサービスを供給するためのコストが上昇したりする場合だ。
足元を見る限りモノ余りの構造は変わっていないし、賃金の上昇も鈍い。さらに、多くの日本人は、バブル崩壊後の15年間に、あまりにも長い経済の低迷期を経験したために、このような理由で起こるインフレなど、すっかり過去のものになったと信じて疑わない。
ただし忘れてはならないのは、貨幣価値の下落によりインフレが生じる可能性だ。足元のインフレ指数が落ち着いているとはいえ、日銀が超金融緩和を長期化しているので、国内はすでにおカネがジャブジャブの状態。仮に景気が悪くても、貨幣価値が下落すれば物価は上がる。この場合、一般物価の上昇に4~5年先だって生じるのが、地価や株価の上昇が引き起こす資産インフレだ。資産インフレがもたらす「資産効果」は需給を引き締めるので、巡り巡ってインフレ指数を押し上げる効果がある。
――財政赤字も将来のインフレ要因?
貨幣価値の下落は、日本の膨大な財政赤字とも深く関与している。財政赤字問題の解消へ向けて、さまざまな議論が行われているが、これだけ赤字額が膨大になると奇手奇策はない。
仮に赤字の解消が進まず、現在830兆円の国債発行残高が、むしろ900兆円、1000兆円へと膨らむようなことがあれば、インフレによって借金の実質的な価値を減らすよりほかに手段はないだろう。またこの場合、為替レートは理論上、円安に進む。
緩やかなインフレ+歳出削減
+増税が現実的
――政府がハイパーインフレによって借金を棒引きする?
万端尽きた後の最後の手段として、国は人為的にハイパーインフレを作らざるを得ない。ただし、これは財政破綻の次に最悪の政策。本来は、同じ価値の貯蔵手段であるのに、土地とか株を持っている人は大儲けをするが、現金を持っている人は大損してしまうという「不公正」が起こる。社会的な「不公平」「不公正」が起こるわけだ。
――ハイパーインフレはいつ起きるのか?
私は決して近い将来にハイパーインフレが来ると予想しているわけではなく、今すぐそれを回避する手段を打つべきだと主張している。日本人として、このような最悪の事態が訪れる前に、賢明な手段が取られることを望んでいる。
ただし今は、そのための青写真すら描けていないのが実情であり、実際にはほとんど選択肢がない。歳出削減と消費税増税の具体的なスケジュールすら決められず、一方ではこれをやり過ぎると景気が失速するというジレンマにも直面する。
ハイパーインフレという最悪の事態を回避する次善の策が、“穏やかな資産インフレ政策”だ。急激な資産インフレによるバブル崩壊は「いつか来た道」であり、過ちを繰り返さないためには、あくまでも“穏やか”であることが必要だ。これに緩やかな歳出削減と増税を組み合わせるのが、現実的な選択肢だろう。財政赤字問題は、日本の“アキレス腱”。この行方が、日本の将来を左右する最も重要なポイントになる。残されているのは、インフレが“穏やか”か“急激か”の二者択一だ。
――政府も本音ではインフレを避けられないと思っている?
2011年度にプライマリーバランス(基礎的財政収支)が黒字化したところで、本質的な問題の解決にはならない。こんなものは、言葉の遊びにすぎない。ところが今はそれすら実現が危ぶまれており、不毛な成長率論争が繰り広げられている。
「最後はインフレ政策を取る以外に、ほかに解決策があるなら教えてよ」というのが政府の本音だろう。政治家は、今の財政赤字問題を自分の家計にたとえてみればよい。自分の任期を無事に乗り切るためだけの、長期的な視座に立たない無責任な議論などできないはずだ・・・



