フィナンシャル ジャパン オンライン版|TPPと日中韓FTA 松田公太

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TPPと日中韓FTA 松田公太2012年03月号

TPPと日中韓FTA 松田公太

昨年11月、日本はTPP交渉に参加表明しました。中国は、アメリカと日本が参加するTPPの広がりを警戒し、日中韓FTA(自由貿易協定)など、ASEANを巻き込んだ枠組みづくりに積極的になってきています。しかし本当に日中韓FTAは、進むのでしょうか?




日中韓3カ国のFTAの実現に向けた産官学共同研究は、2003年から民間で始まり、10年から政府代表らも加わる形となりましたが、ほとんど前進していないのが現状です。課題は、関税の引き下げよりも、ルール作りにあります。

皆さんご存じのように、韓国は民主主義国ですが、中国は一度も選挙をやったことがないような社会主義国です。そして、子供のころから「自分たちが世界の中心である」という中華思想を教え込まれて育ちます。私の父は55年以上も水産業で仕事をしており、中国との取引も何十年と続いていますが、いまだにさまざまな局面で驚かされると聞きます。最近も、1箱当たり何キロという基準で買い付けを約束していた「あんこう」が、届いて中身を調べてみたら、あんこうの腹の中に氷の塊がたくさん詰められていて、融けたら重量が半分にしかならなかったそうです。文句を言って返金を依頼したら「腐らないように凍らせろという指示があった。その通りにしただけ」と返金に応じなかったそうです。極端な例かもしれませんが、正しく自分流のルールを作ろうとしている。まるで、サッカーの試合をしたら、ペナルティーエリアで突然ボールをつかみ、ゴールにそのまま投げ込んでしまうようなもの。それが正当なルールだと真顔で主張されたらどうしようもなくなります。

朝令暮改ということわざは、中国で生まれましたが、朝の命令が、夜には変わっているという意味です。ルール・価値観が、常に変わるため、自分で生き延びることをまず考えなくてはいけないのです。「ルールを守っても、ルールは自分を守ってくれない」ということがDNAの中に刻み込まれているのでしょう。外交力が弱いといわれる日本。それは、「アジアの基準を作り、真の安定と平和に貢献する」という気持ちが弱かったからではないでしょうか。TPPは資本主義・民主主義のルールを環太平洋地域内で強固なものにし、いずれ中国に参加してもらうためのプラットフォーム作りでもあるのです。

TPPからFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)へ。日本の参加表明で、現在の9カ国(P9)から、日本、カナダ、メキシコ、さらには台湾が参加するという話も出てきています。TPPが目指すもの、日中韓FTAが目指すものは、それぞれ何なのか。それらの理念と日本の国益、アジア・太平洋地域の安全保障、安定、繁栄を冷静に見極め、その中で日本の役割と交渉力をいかに発揮できるかが問われている局面なのです。