ベルセルク 黄金時代を作るチーム力
チームは絆と成 長で強くなる
傭兵集団“鷹の団”はいかにして戦いで結果を出し続け、王国正規軍になるくらいまでの強いチームになり得たのか? 『ベルセルク』から結果を出すチーム像を探る。
文・月岡普貴子 写真・鰐部春雄
〝黄金時代〟はチームが
成長することで作られる
文化・勢力・活動などが最盛んな幸運の時期を表す〝黄金時代〟。2月4日に公開される〝黄金時代篇〟では、ガッツとグリフィス、そして鷹の団の成功と希望に満ちた〝黄金時代〟が描かれている。
ミッドランド王国に雇われた傭兵集団である鷹の団を率いて戦功を挙げ、王国正規軍にまで上り詰めていくグリフィスの姿は、例えるならミッドランド王国という大企業の中で、頂点にのぼりつめようという野望を抱えたビジネスパーソンの姿と重なる。また一傭兵として自分の剣だけを頼りに生きてきたガッツが、鷹の団に入り切り込み隊というチームの隊長を任されるようになったのも、ある種の出世といえるだろう。
なぜその平民出の傭兵集団が結果を出し続け、王国正規軍になるくらいにまで成長することができたのか? そこには鷹の団が単なる傭兵が集まっただけの〝集団〟ではなく、一つの〝組織〟であったことが要因であると考えられる。
鷹の団は戦場の猛者たちから〝敵に回したくない〟と思われるほどの傭兵集団で、〝戦場の死神〟と言われるほどに恐れられた存在。この大きなチームを統べるのは、強さ・知性・美貌を兼ね備えた平民出の若き指導者・グリフィスだ。その下には、切り込み隊の隊長を務めるガッツをはじめ、キャスカ、ジュドー、ピピン、コルカスといった〝千人長〟といわれる隊長が、それぞれのチームを統率している。
ガッツも鷹の団に入る前は、傭兵としてさまざまな戦地を渡り歩いていた。高名な剣士ともなると騎士などに正式に仕え、ある種〝安定した職〟を得ることもできるが、本人はそれを望まなかった。
そんなガッツだが、鷹の団の団長グリフィスの目に留まり、なかば強引に引き入れられることになる。傭兵時代は誰ともなれ合わなかったガッツだったが、圧倒的な強さを持つだけに、激戦をくぐり抜けていくうちに、団員から次第に慕われるようになっていく。中にはそんなガッツに嫌味をたらたらと述べる者もいるが、皆、心の中ではその実力を認めており、団員たちにも心を開いていく。やがて切り込み隊長としてチームをまとめあげ、多くの戦功を支える存在にまでなっていく。
ガッツはチームを持ったことで、自分が生きるための戦いから、仲間とともに生きるための戦いに変化していった。ガッツが切り込み隊隊長(チームリーダー)になったことは、ガッツ自身だけではなく、鷹の団という組織も大きく成長させることにつながったと言えるだろう。 金銭の雇用契約だけで結ばれた傭兵団は、単に兵の寄せ集めの〝集団〟にすぎない。「あの城を攻め落とす」といった目的のために戦っているわけだが、チームとしての機能は薄く、そこには先ざきの成長ビジョンは見えない。
しかし鷹の団は、給金などの報酬以上に鷹の団の団員として行動することに対し、やりがいを感じており、それぞれが責任や役割を全うすることに誇りを持っている。同じ目標に向かって進む〝組織〟だからこそ、絆も生まれ成長し続けることができたのだろう。
鷹の団から黄金時代の チームを考える
ガッツをはじめ鷹の団の団員たちを魅了するリーダー、グリフィスのカリスマ性は絶大なものがある。現実の世界でも、カリスマ経営者の強力なリーダーシップにけん引され、急成長していく企業は多くみられる。 そのカリスマ性のもとになるのは、圧倒的な実力だ。ことにグリフィスは容貌こそ華奢だが、ガッツをも剣で倒し、無理やり自分のチームに引き入れている。それまでガッツが独りで戦ってきた理由には、群れるのが面倒だということもあるだろうが、「自分が一番強い」という自負があったはずだ。その自分が力の前に屈服させられたとき、素直にその人間の下で働くということを認めざるを得なかったのだろう。自らの実力に自信を持ち、死力をもって戦いを挑んだガッツに、グリフィスに対するやっかみなど見られない。
しかし、こうしたカリスマ経営者が、必ずしもチームに強い力を発揮させるとは限らない。メンバーが主体的に物を考えることを止めてしまったり、判断力を鈍化させてしまったりする。そうして組織全体に弊害を生じさせてしまう。 ガッツ、グリフィスらが最高のチームワークをもって築き上げた鷹の団の黄金時代の栄光も、カリスマであるグリフィスの心の乱れによって崩壊へと向かっていった——。
物語は残酷な宿命が待ち受けるパートⅡ「ドルドレイ攻略」、パートⅢ「降臨」へと続いていくわけだが、この〝黄金時代篇〟で見せた鷹の団の成長を通して、会社、学校などの組織やチームのありかた、自分の役割などについて、改めて考えてみるのもいいのではないだろうか。
傭兵とは……傭兵とは〝雇い兵〟とも言われ、金銭などで雇われ、直接利害関係のない戦争に参加する雇用契約で結ばれた兵やその集団のことを指す。現在にも傭兵は存在しており、近頃話題になっている民間軍事会社も紛争やテロ対策として作られた新しい傭兵組織と言える。