山田真哉氏インタビュー 「人の上に立つなら 会計は必須」

会計に興味を持っても何となくハードルが高い感はある。
そこで、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社)の著者で 公認会計士の山田真哉氏に、身近なテーマを交えてもらいながら、 会計知識を身に付けるメリットを聞いた。
会計的視点で社会を見る
── 会計はハードルが高く感じますが、ビジネスパーソンが会計を知ることで得るメリットは何ですか?
一番は決算書が読めて、その意味を理解できるようになることですね。逆に会計が分かっていないと、決算書の字面が読めるだけで、意味を読み違える可能性もあります。もちろん決算書が読み取れなくても仕事はできます。でも例えば英語が話せなくても外資系企業に勤めることはできたとしても、英語を話せた方が仕事も出世もしやすい。先ほどハードルが高そうだとおっしゃいましたけれど、おっしゃるとおり高いんです。英語と同じように、会計も特殊な言語ですから。でも会計も読めるようになれば、人とは違う武器になるし、少なくとも独立したり事業を任されるようになったりした場合、会計を読めないというのは英語が話せないのにアメリカに行ってしまうようなもので無謀極まりない。普通のサラリーマンとして一生を終えていくのなら僕は必要ないと思いますが、人の上に立とうとするならば必須です。
── 会計的な視点を持つと、世の中の事象の見え方が変わる気がします。
身近なところでも会計的な見方をすると面白いことが分かります。最近、高級料亭がランチを始めることが多いんですね。夜に食べに行けば3万円くらい取られる料亭でも、ランチなら1000円で食べられるような。これはなぜだと思いますか?
── 空いた時間の有効活用ですか?
もちろんそれもあります。料亭がランチを出すのは、場所と食材について追加コストが掛からないためです。前日の夜に余った食材を生かして翌日のランチのメニューを組めば、食材は余らないし、新しく店を構える必要もない。 でもこれを会計的には、まったく違う視点で見ることができます。専門的な言葉を使うと、「キャッシュフロー(現金の流れ)」を良くするためだと僕たちは考えるわけです。会計の知識が無いと、夜3万円で昼1000円だから、ランチはあまり収入の足しにならないというふうに思えますよね。人件費だけ掛かって損なんじゃないかと。でも会計の視点からいうと夜の3万円より昼の1000円の方が大事です。なぜでしょうか? 夜の3万円と昼の1000円は、同じ「お金」だと思うかもしれませんが、実はまったく違うお金なんです。
── 3万円は高額ですよね。財布の中に現金がない人もいるかと……。
そのとおりです。例えば5人で食事をしたとしたら3×5で15万円。15万円を現金で払う人ってほとんどいないですよ。ほぼみんなカードで払うんですね。でも昼は現金で支払ってもらえるんですよ、1000円くらいですと。カードだと、3万円支払ってもらってもお店側に現金として来るのはカード会社を経由して2カ月後くらいなんですよ。ということはちょっと台所事情が苦しいときに、お客さんは来るけれど食材は仕入れなくちゃいけないとなっても、お金が無いから食材を仕入れられないという危険も出てくるわけです。しかし、昼の1000円という現金収入が手元にあれば仕入れに行けます。現金かカードかということでまったく違うんです。これが会計の視点ですね。 さらに付け加えるならば、会計は1カ月・四半期・半期・1年というペースで見ますが、高級料亭の夜の部は売り上げの変動が激しいんですね。3月や4月は盛り上がりますが、6〜8月はそんなに需要がありません。しかし年末になるとまた盛り返すなど変動が激しい。そのためカード払いが中心になっていると、お客さんはいっぱい来ているけれど、現金が無いということが起こりやすい。逆にランチは変動がそんなにありません。売り上げが落ちるのはお盆休みと年末くらいです。3月や4月だからいっぱい昼飯を食べるなんていうことはありませんから(笑)。僕の言い方で言うと、昼は「定期低収入」で夜は「不定期高収入」なんです。会計の視点があれば、自社全体や自分が所属している部門を見ることができるようにもあります。
アニメやAKB48も!?
── ビジネスの仕組みをつくろうとするときに会計は役立ちますね。
会計はよく割り算だといわれますが、売り上げは掛け算なんです。どういう商売が一番儲かるかというと、売り上げの柱がいっぱいあることなんです。例えばアニメでいうと、キャラクターが多いことなんですよね。最近の深夜アニメを見ると、そんなに大ヒットしてなくても、多くのハーレムもの(少数の男性を多くの女性が取り囲むアニメ)は取りあえず女の子が多い。ハーレムものは何がいいかというと、キャラが多く出しやすいこと。当然売り上げも見込めやすいですよね。1人の女の子に男たちが群がる話も別にいいんでしょうけど、儲からないわけですよ(笑)。 それを生かしているのがAKB48ですが限度もあります。