一寸先は闇の時代、せめて優れた照明なしでは前進することもむずかしい。
2009年の「景気」「株式」「為替」はどうなるのか? 各専門家が道なき道を照らし出す。
構成=山本雅幸 写真=鰐部春雄

[経済]景気回復は2010年以降
熊谷亮丸(大和総研 シニアエコノミスト)
100年に1度の津波に襲われた2008年は過ぎ去ったが、
その傷跡は深く、後遺症は重い。リハビリにはまだ相当程度の期間を有し、
景気が回復に向かうのは少なくとも2010年以降になるだろう。
世界経済が抱える3つのリスク
結論から言えば2009年度の日本の実質GDP(国内総生産)成長率はマイナス1.3%となり、かなり落ち込みが大きいだろう。これは欧米を中心に世界経済が大きく下振れするためで、輸出主導型の日本経済に悪影響が及ぶのは避けられない。
09年の世界経済が抱えるリスクは、主に3つある。まず「クレジットクランチ(信用収縮)」が発生するリスク。2つ目は財政赤字拡大への懸念による「長期金利上昇」のリスク。3つ目に住宅価格の下落によっていわゆる「逆資産効果」が発生するリスクだ。これら3つのリスクが顕在化すると、結果的に金融システムと実体経済の間でスパイラル的な悪循環が加速することが懸念される。
クレジットクランチは、慎重な貸し出しスタンスに転じた金融機関のレバレッジ低下に起因する。また、足元では消去法的に債券が買われているが、各国が積極的な財政出動に乗り出す中で、将来的に長期金利は世界的な上昇に転じかねない。
さらに、住宅や株価下落による逆資産効果は、世界的な消費腰折れを招く恐れがある。これら3つが同時に下振れ要因となれば、その圧力をおいそれと財政支出で相殺できるものではない。
過去をさかのぼると特に米国と日本の景気は密接に関連しており、米経済が悪化すると日本も遅れて景気後退局面に入ってきた。また回復にもタイムラグがあり、米経済が回復してしばらくしてから日本経済が立ち直る傾向がみられる。米景気停滞の元凶である住宅価格が下げ止まるのは、早くても2010年の下期とみており、まだしばらく環境は厳しいだろう。したがって日本の景気が本格的な回復に向かうのも、2010年の後半以降となる可能性が高い。
外需依存の日本が受ける試練
日本の経済成長の生命線である輸出と、世界の経済成長率との連動性は極めて高い。これまでのパターンから判断すれば、世界経済が1%下振れすると日本の輸出は4~5%減少し、日本の成長率を0.6%下押しする。主要国の景気はここへきて急速に悪化しており、日本からの輸出数量の減少率は既にITバブル崩壊後の最悪期を凌駕するに至っている。
またこのところの動きとして世界的に金融不安が高まると、リスク回避の対象として消去法的に円が買われ、円が独歩高となる傾向がある。円上昇を嫌気して日本株が売られ、これが世界的な金融不安を強めてさらに円高が加速される。「世界的な金融危機」「円高」「株安」との間に、「魔の三角形」とでも呼ぶべき悪循環の関係が成立している。
1割円高になると日本のGDPは0.6%押し下げられるので、これも日本の経済環境をいっそう厳しくしている。このところの原油安は日本経済に追い風だが、世界需要の減少と円高の前には、このメリットも吹き飛んでしまうのが実態だ・・・
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