相次ぐ食品の偽装発覚や有害物質の混入。
日本の食の安全を揺さぶる事件が多発している。
だが、流通の現場からは「まだまだ偽装が潜む」との声が聞こえる。
偽装騒動に巻き込まれない方法はあるのだろうか。
数年後には集団訴訟に発展する恐れもあるという。
取材=森田圭祐

事故米、884万食の給食で使用
2008年9月5日、大阪の米販売会社「三笠フーズ」が用途を工業用に限定した「事故米」を、食用と偽って販売していたことが明らかになった。
事故米とは、1993年のウルグアイ・ラウンド合意で、日本が高関税をかける代わりに一定量の輸入を義務づけられた米(ミニマムアクセス米)の一部で、保管中にカビが生えたり残留農薬が検出されたりして食用には適さないと判断されたもの。事故米からは今年1月の中国製冷凍ギョーザによる中毒事件で問題となった有機リン系農薬成分メタミドホスや、発がん性が指摘される毒薬のアフラトキシンB1が検出されている。政府は糊など「工業用」との条件で販売していたが、三笠フーズは「食用」と偽って販売していた。
その後、農林水産省が事故米の流通状況を調べたところ、三笠フーズだけでなく、名古屋市の食品・飼料販売会社「浅井」や肥料製造会社「太田産業」、新潟県長岡市のでんぷん製造会社「島田化学工業」でも食用と偽って転売していたことが明らかになった。
事故米は菓子や焼酎、食品など、幅広く使用され、正確に把握するのが難しいほどに汚染は広がっている。
文部科学省のまとめによると、使用が疑われる場合も含めて、原材料に事故米が使われた学校給食は、全国41都道府県で少なくとも約884万食にのぼることが10月1日までに分かった。卵焼きやオムレツに「米でんぷん」が使われていたケースが多い。病院や特別養護老人ホームなどの給食に紛れ込んだことも明らかになっている。
焼酎の原料に事故米を使っていた恐れのある酒造メーカーは自主回収に踏み切る。アサヒビールは芋焼酎「かのか」など9ブランド、65万本を回収。回収に伴う損失は15億円にのぼるという。
農水省は9月11日、三笠フーズを不正競争防止法違反(虚偽表示)で刑事告発した。24日には大阪、福岡、熊本の3府県警が食品衛生法違反(規格基準外食品の販売)と不正競争防止法違反(虚偽表示)の疑いで、大阪市にある三笠フーズ本社や福岡県の工場など7都府県の関係先計28カ所を家宅捜索している。
また、三笠フーズが不正転売した事故米を購入し、芋焼酎の原料に使った鹿児島県日置市の西酒造は、三笠フーズと同社の冬木三男社長、関連会社を相手に、風評被害や商品回収などによる損害を受けたとして、約19億6800万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしている。
事件発覚後、「人体に影響がないことは自信をもって申し上げられる。だからあんまりじたばた騒いでいない」と発言した太田誠一農水相は、この事件を受けて9月24日に予定されていた福田内閣の総辞職を待たずして9月19日に辞任。また、「責任は一義的には食用に回した企業にある」「私どもに責任があると今の段階では考えていない」と発言した農水省の白須敏朗事務次官も辞任する異例の事態に発展した。
農水省は「事故米対策本部」を設置。また、不正流通の解明を続けるとともに、食糧法を改正し、米の流通制度の抜本的見直しの方針を決めた。農水省への届け出だけで業者が米を取り扱える仕組みを改め、取扱業者に仕入れ・加工・販売などの記録を義務づけ、罰則も強化する方針だ。
麻生太郎首相は所信表明演説の中で、「事故米と知りつつ流通させた企業の責任は、断固処断されるべきとして、これを見逃した行政に対する国民の深い憤りは、当然至極と言わねばなりません。わたしは、行政の長として、幾重にも反省を誓います。再発を絶対に許さないため、全力を挙げます」と事故米対策に触れた。
07年1月の不二家を発端に、北海道苫小牧市のミートホープの偽装ひき肉、北海道の有名菓子「白い恋人」、伊勢の「赤福」、秋田県の「比内鶏」、大阪の老舗高級料亭「船場吉兆」、岐阜県の「飛騨牛」、中国や台湾産ウナギの国産偽装……。そして、とうとう日本の主食“コメ”にまで食品偽装は波及した・・・



