IT産業の躍進、人口約11億人という潜在的な市場規模、巨大企業による
国際的なM&A戦略。インドの存在感は近年、飛躍的に高まった。
だが米国経済の不安定化や原油など資源価格の高騰を受け、
いま成長に向けた試練に立っているともいわれる――。

成長するインド企業
背景には改革あり
今年1月、インドのタタ・モーターズが10万ルピー(約2500ドル)という超低価格車「ナノ」をニューデリーで開催されたモーターショーで披露、世界に衝撃を与えた。エアコンやラジオを省いたそのシンプルな仕様は、巨大なインド大衆市場を感じさせるものでもあった。
ナノ発表後の5月には、日産自動車がルノー、現地自動車メーカーのバジャージ・オート社と組んで合弁会社を設立。超低価格車を投入することを発表した。価格は2500ドルとされ、先行したタタのナノを意識していることは明らかだろう。
自動車メーカーに限らず、インド企業は世界で知名度を上げている。情報技術(IT)はインドの基幹産業といってよく、多くの企業が国際的に活躍している。
タタ・モーターズと同グループのタタ・コンサルタンシー・サービシズ、インフォシス・テクノロジーズ、HCL、ウィプロ・テクノロジーズなどの名前は、インドとそのIT産業を語る上で常に言及される。いずれも日本法人を置いている。
インド企業の活躍の背景には、経済協力開発機構(OECD)のリポートが「経済に有益なインパクトを与えた」とする〝改革〟がある。同レポートはさらに「通信、保険、資産運用、ITなど政府が規制緩和を進めた分野は、生産が急速に向上している」としている。
一連の改革には、直接税の低減、政府による産業界に対する許認可の撤廃、大企業の投資活動の規制緩和に加え、金融市場が刷新されたことなどが含まれる。インドでは、1980年代半ばから従来の社会主義的な経済運営を脱し市場経済化を目指す改革が進んだ。エコノミストでもあるマンモハン・シン首相は財務相としてこれに関わった経歴の持ち主だ。
サブプライム余波
株価指数が下落
2007年の実質GDP成長率は、前年比9.6%となり、高成長が続いている。個人消費が前年比6.9%増となるなど、堅調な内需が経済成長を支える構図だ。では株式市場はどうなのか?
インド株式市場は07年、上昇トレンドを謳歌し、インド経済も好調が喧伝されていた。だが年が変わると一転、株式市場はその勢いを失った。ムンバイ証券取引所のSENSEX指数は、年初に史上最高値の約2万1000ポイントに達してから下落、7月半ばの時点で約15カ月ぶりの安値の1万2676ポイントとなるなど、さえない動きを見せている。
米サブプライムローン問題の根深さが判明するにつれ、世界の投資家は新興国から資金を引き上げ始めた。総じて「外国人売り」が新興国の株式市場に与えたインパクトは大きい。インドもその影響をこうむっているといえそうだ。
1~6月期の市場の下落率35・5%超とBRICsの中でも中国に次ぐパフォーマンス悪化。BRICsの中では原油、石炭や鉄鉱石など資源を豊富に持つ国ブラジル、ロシアと持たざるインド、中国の差が株式市場に出ている。
インドはこれからどうなるのか。インド経済を熟知する関係者の視点を知りたいところだ。
そこで「新光インド・インフラ株式ファンド」を取り扱っている新光証券の招きにより来日したタタ・アセット・マネジメント(タタAM)のファローク・K・カバラナ会長、同ベド・プラカッシュ・チャトルベディ社長、プラディープ・ゴークレイ調査部長に話を聞いた。
資源価格高騰の最中インドは〝資源国〟に
まず財閥タタ・グループの取締役でもあるカバラナ会長は、経済全般の見通しについて、「アナリストはさまざまな指摘をしているが、インドは今後25年で世界のトップ3の経済大国に入れると確信する」と力強く語った。「中産階級が近年3倍に増え、内需は活発に伸びている。GDP成長率も毎年約8%程度に達している」
確かにこの数字だけを聞くと、新興国の面目躍如たる感がある。だが昨今の資源価格高騰が続く情勢下、インドの現在を厳しく見る目があるのも事実――。「(石油・天然ガスなど)第一次製品をそのまま輸出するのであればブラジル、ロシアに負ける。だが同じ資源でもインドはそこに加工を加えるところで違う。認知度は低いがインドも資源国だ」とカバラナ氏はいう。
タタAMのゴークレイ調査部長も、「石油、天然ガスは輸入しているが、石炭、アルミニウム、鉄鉱石は現在、自国で産出している」と資源が皆無ではないことを強調。「今後3年をめどに世界有数の規模の国内ガス田で生産を開始する。ほかにも国内の油田で09年内に生産を開始する予定だ」とインドの〝資源国化〟を明言した。
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