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[巻頭企画]ビールは誰が飲む?
世界は業界再編、縮小する国内市場と日本企業のゆくえ

“夏だ! ビールだ!”と勢い込んでいるのはメーカーだけ──。
ビール類の不振が明らかになって久しい。7月にビール大手各社が発表した
ビール類の出荷量(1~6月)は、サントリーの缶商品据え置きを除き、
2~4月の値上げの影響もあり、前年同期比4.2%減となった。中でもビールの
凋落は著しく7.6%減、新ジャンル(第3のビール)の7.2%増と著しい対比をつくった。
少子高齢化と嗜しこう好の多様化を受け、「苦味」が売りのビールは追い込まれ、
発泡酒も一時期の勢いを失ったようだ。残された希望の光は低価格の新ジャンルだけなのか?
ビール類を取り巻く状況を変えうるものはあるか? 業界と各メーカーの現状を探ってみた。

構成=玉居子精宏 写真=鰐部春雄

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夏の風物詩に見るビール不振その原因はどこにあるのか

 屋上を吹き抜ける夕刻の風、ジョッキを派手に合わせる音、香ばしい焼肉のにおい。7月末日、東京・銀座の松坂屋屋上にあるビアガーデン「麦羊亭」に集った人たちは、「カンパーイ」のかけ声も勇ましく、ビールを次々と飲みほしていく。運営するサッポロライオンによれば、同店で1日に消費されるビールの量は500~600リットル。600リットルの場合、来店者数は500人強、1人あたりの消費量は約1リットルになる。
 サッポロライオンの広報・西村礼佳氏は、「ビアガーデンの数が減っている中、お客さまは〝非日常的な開放感〟を楽しみにしているようだ」とビアガーデンの〝意義〟を語る。ビール不振とはいえ、ビアガーデンに立ってみれば、そんな苦い現実は感じ取りにくい。
 だがビール(発泡酒、第3のビール除く)市場の数字には苦いものがある。1994年に出荷量700万キロリットル超を記録して以降、縮小傾向に歯止めがかかっていない。ビール酒造組合によると、2007年は同345万リットル程度と、最盛期から半減している。そのため各社は発泡酒、第3のビールへと商品の幅を広げている状況だ。

老齢化-酒離れ因果関係あり

 総務省の調査、「推計人口」によれば、08年2月時点で20~ 24歳の人口は7198万人。第二次ベビーブーム世代が成人期を迎えた94年の同9986万人に比較すれば、酒類に親しみ始める世代の数自体が減ったことを意味する。少子化による人口減少は何もビール業界に限った問題ではないが、マイナス要因であることは確かだろう。加えて「高齢になれば飲酒の機会が減少する傾向がある」(ビール酒造組合・堀氏)ため、単純に〝お客さま〟の層がこれから薄くなるのは不可避だ。
 総務省が7月31日に発表した人口調査によれば、今年3月末の時点で75歳以上の総人口に占める割合は1割を超えた。もちろん原因のすべてとはならないだろうが、国全体の〝老齢化〟も酒離れを進めるだろう。
 ではそもそもビール類の市場規模はどれほどなのか? 第一生命経済研究所の永濱利廣・主席エコノミストは、「(市場は)昨年度、1.6兆円で、GDP(国内総生産)全体に占める割合は0.3%。同程度の規模の市場としてペット産業が挙げられる」と指摘する。05年の時点で1兆388億円(矢野経済研究所調べ)のペット産業は、少子高齢化と反比例するかのように伸びている。少子高齢化の負の影響を被るビール業界とは好対照をなすといっていい。日本経済の先行きからも暗雲逃れられない景気の影響「ビールの売れ行きは季節に左右される」というのが定説だ。例えば今年6月のビール類出荷数は前年同月比88・5%(ビール酒造組合調べ)と不振だったが、これは「本年6月は降水量が多いなど、天候不順の影響も大きい」(同組合)と考えられている。
 さらにいえばビール消費は中長期的に景気、経済の動きに左右される。ビールメーカー5社(アサヒ、キリン、サントリー、サッポロ、オリオン)が加盟するビール酒造組合の堀正明専務理事は、最近のビール業界を取り巻く環境に関し、「今年に入ってから経済の先行き不安があり、家計では節約意識が高まっており、嗜好品であるビール類は厳しい状況だ」と話す。企業の業績悪化とビールは無縁ではありえない。「ビール市場の半分は外食市場向けの〝業務用〟だが、企業の接待などが減ることで影響を受ける」という。
 少子高齢化、経済的な要素。ここに加わる嗜好の多様化に関して、前出の永濱氏はビール業界の現状を自動車の売れ行きと比較して次のように指摘する。「若者が〝なくてもいい〟という姿勢で、自動車の国内販売台数は落ち込んでいる。ビールはこれと似たような状況にある」。もはや嗜好の変化に歯止めはかけられないのか。
 アサヒビールは7月末、「20代に提案する新感覚発泡酒」と位置づけた新商品「ジンジャードラフト」を10月に発売すると発表した。将来のビール類消費を支える20歳代に訴求する商品だが、こういった新規開拓の試みがどこまで効果を発揮するのかが注目される。

続きはFJ10月号で



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