TCIがJパワーに提案を一つも飲ませることができなかったように、今年の株主総会は「会社側圧勝」に終わったようにも見える。たしかにそれは事実だが、日本プロクシーガバナンス(JPG)の吉岡洋二社長は、「昨年のファンド全敗とは意味するところが異なる」と言う。
構成= FJ 編集部 写真=鰐部春雄

海外ファンドの戦略転換
全面対決から実利狙いへ
今年の株主総会は、昨年より海外投資ファンドによる株主提案が少なかったこともあり、報道では「平穏に終わった」ように報じられたが、実情は必ずしもそうではない。6月総会ではないが、5月のアデランスホールディングス総会で会社提案が否決された件はその象徴だ。ある意味では、昨年の“いちごの乱”(東京鋼鐵が大阪製鐵と経営統合するのを阻止するため、いちごアセットマネジメントが委任状争奪戦を仕掛け、個人株主を中心に賛同が広がり、株主総会で統合は撤回された一件)よりインパクトがあるだろう。TCIのJパワー(電源開発)に対する株主提案も、結果的には否決されたものの、報道によると、3人以上の社外取締役を置くべきとの定款変更の提案は4割弱の株主が賛成したという。TCIの持ち株比率は9.9%と1割にすぎないので、残りの約3割は、ほかの個人・機関投資家などがTCIに賛成したことを意味する。結果としては「全部否決」されたものの、「すべての投資家が会社側を支持した」わけではない。
なぜこういう結果になったかといえば、ファンド側が“実利を取る”戦略に切り替えたからだ。ブランデス・インベストメントが小野薬品に出していた株主提案を取り下げたのはその一例だ。昨年、会社側に“全面対決”を仕掛けた海外ファンドが実利を狙いにいった。スティール・パートナーズも、昨年は6社に対して株主提案を出したが、今年は戦術を変えて、一切そういうことをせず、対話路線を取っている。
また、会社側が対話路線に切り替えた節もある。事前に水面下で交渉して、歩み寄る姿勢を見せたようだ。この裏には、国内有力機関投資家のサポートがあったことを会社側は忘れてはならない。結果として、株主の声を反映させる方向にしっかり進んでいるように思えるので、これは評価してしかるべきだろう。
ガイドラインに定める“社外取締役のあるべき姿”
当社は、提携先である米プロクシーガバナンス・インク(PGI)と基本的なポリシーを共有した上で、日本独自の法令や商慣習を考慮して作成した「ガイドライン」に従って議案を分析している。これは毎年見直しを行っているが、今年は「社外取締役」の期待される役割についての基準を設けた。
ガイドラインでは、在任8年以上の社外取締役は独立性に問題があるとしている。取締役会への出席率は、本来100%であるべきだ。たとえそれが達成できなくても、さすがに75%を下回るようだと適任とはいえないだろう。また自分の会社を含めて6社以上の取締役や監査役を兼職している人は、期待される社外取締役としての役割を遂行できないと判断し、再任に反対している。
事前警告型買収防衛策に関しては、去年は46社に賛成、反対したのはわずか1社(TBS)に対してだけだったが、今年は24社に賛成する一方で、28社の議案に反対した(母数、対象企業は異なる)。
今年反対した28社のうち19社は“社外取締役ゼロ”で買収防衛策を導入しようとしていた。防衛策は、「株主共同の利益を維持向上させるため」に導入するもので、社外取締役の存在は必須だろう。経営陣と株主の利害が対立したとき、社内取締役は会社側につくと考えられるからだ。いくら独立性の高い委員会があっても、最終的に決める取締役会に、そういう独立した取締役がいなければ意味はない。当社はこの28社のうち7社については、独立委員会のメンバーの独立性に問題があると判断した。たとえば顧問弁護士が入っていれば、それは明確に独立しているとはいえないからだ。



