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「霞が関埋蔵金男」が語る
社長に言われてやったら部長に意地悪された~元財務省(東洋大教授)髙橋洋一

霞が関の「埋蔵金」を見つけたことで知られる髙橋洋一氏は、財務官僚でありながら旧知の竹中平蔵氏に誘われたことがきっかけで、小泉、安倍政権に政策スタッフとして参画。郵政民営化を陰から支え実現に導いた。この春に退官して大学教授、金融庁顧問を務めている髙橋氏に、公務員制度の問題点や今後の研究テーマについて語ってもらった。
構成=濱田優 写真=鰐部春雄

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役所を辞めても“脱藩”していない人は多い

──「脱藩官僚の会(官僚国家日本を変える元官僚の会)」に参画されましたが、狙いは?
 発起人代表の江田憲司衆議院議員(元内閣官房、通商産業省)が私の本『さらば、財務省』(講談社)を読んで、「自分と同じ境遇の人がいた」と感動したらしく、電話がかかってきたんだよね。まだ立ち上げたばかりで、いま人集めをしているところだけど、どのくらい集まるかはわからないね。
 世の中に「元官僚」はたくさんいるし、「入りたい」という人も多いはずなんだけど、会に入ると「ブラックリストに載る」みたいに見られてるんじゃないかな。「役所ににらまれる」と恐れて手を挙げられない元官僚はいっぱいいると思うよ。
── 役所の人間でない以上、出世に響くわけではないですが……。
 役所はいろんなところに補助金を配っているからね。いい悪いは別にしても、辞めた後に役所からの資金が入っているような組織にいたら、脱藩官僚の会には入れないよね。対立することもあるわけだから。脱藩というのは、「役所に所属していない」というだけではなくて、「役所と切れている」ということ。逆にそれしか条件がないんだけど、それをクリアする人が少ないわけ。悲しい時代だね……それくらい役所は強いんだな。
── マイルドインフレ移行を訴える記事を拝読しました。
“普通の国”はCPI(消費者物価指数)やGDPデフレーターが2から3の間なのに、日本だけほぼゼロとかマイナスなんだよ。そうすると相対的に円の価値が高くなって、円高になるのは当然。だから私は「政府も日銀もそういう経済政策、運営は得意じゃないでしょ?」と言っているだけ。「外国と同じようになっていくほうが楽なんじゃないの」ということですよ。なぜなら、日本のインフレ率がほかの国と同じ水準である間は為替問題が生じない。円高になるといつも輸出産業への影響がどうのとか言うけど、同じように経済が伸びていけばいい。それをベースに考えたほうが簡単だと言っているだけ。インフレ率が2~3%あったほうが設備投資しやすくなって、経済成長しやすい。ただ5~ 10%までになっちゃうと投資しづらくなる。マイナスになると、負債の実質価値が増えるしね。
── 日本はインフレではない。
 エネルギーと食品がちょっと上がっているのでマスコミはインフレ到来とはやしたてるが、全然、違うでしょう。まだデフレを脱却していないよ。さっき言ったCPIとGDPデフレーター、あとユニット・レイバー・コスト(単位労働コスト)のすべてがマイナスなら明らかにデフレ。たしかにCPIはプラスだけど、これは実態よりも大きく現れる“上方バイアス”がかかっているものだから、ほとんどゼロかマイナスだと考えていいし、あとの2つはマイナス。経済学者なら「今がデフレじゃない」なんて言えないはず。
 それにモノの値段が高くなっているといったって、それは輸入物価が上がっているだけ。国内商品に転嫁されるのは、かなり先のことでしょう。私は2年くらい前から、「日本は金融を引き締め気味なので、転嫁もできない」ということを警告している。「これから景気も悪くなる、株価が1万2000円ぐらいになっても不思議ではない」と言っていた。その意味では当たっちゃったけど。輸入価格の上昇は交易条件の変化といい、所得を海外に取られるわけだから、金融緩和して、それを補わないと、転嫁すらできなくなる。
 さっき言ったように、日本のインフレ率がほかの国と違うことは、実は経済成長にとっていいことではない。いつも円高の圧力を抱えていると輸出企業も大変だし、いろんな意味で良くない。これは日本銀行の問題。もし日本の投資環境を良くしたいなら、マクロ経済政策の話をしたほうがいい。こう言うと、日本ではすぐに財政政策を思い浮かべるけど、「マンデル・フレミング理論」によれば、変動相場の国では財政政策は効かないからね。
── 金融政策は効くと。
 だから、どこの国でも中央銀行が重要なわけ。それでなぜ財政政策が効かないかを簡単に言うと、財政政策の一番の典型は、国債を発行して公共投資を促すこと。そうすると金利が高くなって、円高になる。公共投資をして内需が拡大する一方で円高のために輸出が減るので、そこで相殺されてしまう。他方、金融政策が効くのは、金利を下げて為替が円安になり、輸出が増えるから。設備投資の増加と輸出増があるから、それなりに効くことになる。

日銀はプロの集団じゃない

── 日本では中央銀行の人事ばかり話題になっています。
 「誰を」を議論している限りダメ。「何を」を議論しなきゃいけない。
 それと、マクロ経済政策の面で日本が世界に著しく劣っているのは、日銀にPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルがないから。他国はPDCA、言いかえると、「インフレーション・コントロール・ターゲッティング」をやっている。日銀は、PDCAを入れると責任問題になるから、避けている。
── 責任の所在がはっきりしてしまいますからね。
 PDCAってそういうものだから。「インフレーション・コントロール・ターゲッティング」を批判する人は「インフレ目標」「インフレターゲット」と言って、意識的に「コントロール」を抜いちゃう。ベン・バーナンキ(現FRB=連邦準備制度理事会=議長)も著書で「コントロール」を抜いているから、そういうことになっちゃうんだけど、外国では「コントロール」を暗黙の了解で読み足している。長いから略しているだけ。

続きはFJ9月号で


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