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[特集]新・世界投資 傾向と対策~1限目 新興国

崩壊「新興国神話」
資源の有無で分かれる明暗

「原油1バレル140ドル超」が象徴する資源価格高騰は、新興国の成長に大きく影響してきそうだ。もはや「順風満帆の成長イメージ」だけで新興国を読むことは難しい。各国はどんな状況になっているのかーー。
 まずはエコノミストの目から新興国の現状を読むためのポイントをしっかりつかもう。その上で資源高のいまだからこそ、注目される新興国の姿に迫ってみよう。
構成=玉居子精宏

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気鋭のエコノミストはこう読む

新興国を広くリサーチする西濱徹氏(第一生命経済研究所)に、「資源」をひとつの切り口として新興国のいまを聞いた。

上がる国、下がる国

―― 新興国といってもさまざまです。まずBRICsはどう見るべきでしょうか?
BRICsは「BR」と「IC」で分けられます。基準は「資源の輸出国なのか? 輸入国なのか?」です。前者ロシアとブラジルは言うまでもなく産油国。後者インドと中国は輸入国。現在これだけ資源価格が高騰すると、前者はその恩恵を受けますし、後者は相対的に景気の下振れの影響を受けやすくなります。さらに新興国全般を見渡すと、食糧価格の上昇は、依然として低所得の割合が高いこともあり、影響を受けやすいといえます。とりわけアジアの新興国では、食料品がCPI(消費者物価指数)に占める割合が高く、その分だけ影響の度合いが高くなっています。
―― 昨年来マネーの動きが変わったといわれていますが。
サブプライムローン問題が顕在化して以降、先進国の金融当局がとった緩和政策により金融市場にあふれたマネーは、商品など〝簡単な〟投資対象へと向かいました。しかし、その内実を見ると、実需を超えて資金が流れ込んでいる印象があります。石油メジャーの英BPの統計では、ここ数年で世界の原油消費量は増加しているものの、大きく増大したのは新興国の中でも中国くらいです。そのほかの国では大幅な増加は見られません。つまり、需要の増加以上にマネーが流入する、投機的な色合いが強まっています。足元では多くの国が、インフレ対応のため金融引き締めに動き始めています。これも商品市場にマネーが流れる要因となっています。この点、ブラジルとロシアの持つ資源は強みを増し、両国の景気を押し上げる一方、消費国のインドと中国には下押し圧力がかかります。ブラジルに至っては、「わが世の春を謳歌している」といった感もあります。

不安要素も実はあるブラジル
バラまき体質の歳出政策

―― ブラジルに死角はないのでしょうか?
原油は国内消費をまかなえる状況にあり、これは強みです。加えて輸出財として石炭、鉄鉱石、穀物、そしてバイオ燃料を持ち、これらで外貨獲得ができるようになっています。ブラジルでもインフレ圧力は徐々に高まっていますが、依然として消費者物価指数(CPI)は相対的に低水準で推移しています。とはいえ食料品の輸出価格と国内価格の間に差が生ずれば、裁定により輸出価格の値上がりが国内価格の上振れ要因となるため、注意が必要でしょう。また財政上の懸念もあります。ここ数年の好景気で歳入は順調に伸びている一方、歳出改革は進んでいません。現在のルーラ政権は少数与党ですが、社会保障の手厚さにより国民の信任を高めてきました。悪く言うとバラまきに近い政策です。当面は心配ないにしても資源価格の騰勢が落ち着いた後を見据えた対応が不可欠であり、中長期的には注目すべき懸念材料でしょう。同じ中南米でもメキシコの場合は米国経済との関係が深く、景気の下押し圧力は強いといえます。一方で、米国から生産拠点を移す動きが、景気を下支えする可能性もあります。ロシアは資源価格の高騰で恩恵を享受しており、旺盛な消費が成長を後押ししています。ただ、すでにインフレが加速しており、景気過熱に向かいかねない危険性もはらんでいます。
―― 労働集約型の産業で発展するインド、中国は資源価格高騰で苦しいようですが、どの程度なのでしょうか?
インドはインフレ率が6月21日の時点で11・63%となっており、金融引き締めに動いています。この措置は株価には下押し材料になります。インフレ抑制の手だてが遅れがちでしたが、これは議会選挙が近づいているためと考えられます。与党国民会議派は経済成長の恩恵を、とりわけ貧困層に享受させる必要があり、成長に水を差す政策はとりにくかったといえます。政府は最新の5カ年計画でインフラ開発に力を入れ、PPP(官民連携)への積極姿勢を見せているものの、金利上昇を受け、国内での資金調達は容易ではありません。また、鉄鋼や石油製品など統制価格を敷いていますが、足元の原材料価格が高騰する折、生産にも下押し圧力がかかっています。同種の統制価格は中国でも敷かれています。上昇する原油価格に対し、両国では補助金による補てんを行ってきました。最近になって、補助金削減による石油製品価格の引き上げが行われましたが、それでも依然として国際価格より低いレベルに抑えられています。中国の証券市場の動向に関して、国営企業の大規模なIPO(株式公開)で一時は株価が大きく上昇しましたが、昨秋以降は見直しが進んでいます。また多くの個人投資家が、株式投資に走ったのも気になります。足元のインフレは豚肉を中心とした食品価格の高騰が要因となっています。主として食糧は自給可能な一方、家畜に必要な飼料や肥料等は輸入に依存しています。CPIは4月が前年比8.5%、6月は同7.7%上昇しています。北京オリンピック後の動きが注視されるところです。経済全体は2010年の上海万博までは徐々にトーンダウンさせながらも、底堅さが続くとみられます。中国はこれまで設備向けなど投資主導の成長を歩んできましたが、今後は消費に軸足をシフトしていくと考えています。アジア新興国では総じてインフレ対策に遅れが出ました。韓国、マレーシア、インド、インドネシアでは今年から来年にかけて、首長ないし国政選挙が行われるため、金融引き締め策で景気に水を差すことを避けたものと思われます。

続きはFJ9月号で



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