お腹をへこませる商品・サービスの行く先は?
社会常識と化して久しい「メタボリックシンドローム」(内臓脂肪症候群=メタボ)。
この4月からは、通称メタボ健診(特定健診・特定保健指導)が始まる。
さらなる拡大が見込まれる健康市場では、従来の健康器具メーカーだけでなく、
通信ネットワーク企業やゲームメーカーにも期待が集まる。
この未知数の市場の見通しと、チャンスに挑む企業に迫った。
構成=玉居子精宏 写真=鰐部春雄

〝ぽっこりお腹〟で2800億円市場?
最近では太り気味の中年男性を指し、「メタボ」と十把ひとからげにする向きすらある。ぽっこりとお腹が出ていれば、「メタボ腹」と、かなり拡大解釈された使われ方もごく自然になった。
「メタボ」。この単語は2006年、急速に市民権を得た。同年の医療制度改革で、生活習慣病対策を重視する姿勢が打ち出され、メディアが大々的に報じたからだ。104ページ図表2のようなデータとともに、メタボはにわかにブーム化、国民の多くを対象とする、身近な〝危険〟として捉えられるようになった。
そんな負のイメージを持つメタボだが、健診義務化を通じ、健康市場の強力な刺激因子になるというのが大方の予測だ。
その規模を語る数字として先頃、「2800億円」がメディアを賑わせた。メタボ健診の義務化で最大1400億円、特定保健指導でさらに最大1400億円(いずれも日本政策投資銀行の試算)の市場が見込まれるというのである。
このメタボ健診効果とも呼ぶべき「2800億円」について、住友商事総合研究所のシニアエコノミスト・田上英樹氏は、次のように解説する。
「この数字は2つの要素からなる。1つ目は、今まで受診していなかった層が新たに受診することによる健診需要増。これが、800億~1400億円に上る。2つ目は保険者(企業などの健康保険組合)が、新たに実施が求められるようになった保健指導のために支払うコストだ。これが700億~1400億円とされる」
今回の制度改革で、保険者側が新たに負うコストは大きい。何しろ実施に向けた事務手続きだけでも、かなりのものになる。加えて実施に際しての実務処理のほか、被保険者の受診履歴を保存・データベース化し、「特定保健指導」を行う必要が生じる。こういった作業に対し、保険者が「特定保健指導支援ソフト」などの商品・サービスを導入するとなれば、これもコストとなり、必然的に市場が創出される。
個人客を狙い撃て
他方、メタボ健診により、個人を狙ったビジネスが熱を帯びてきた。個人=被保険者が健康増進・予防医療のためにコストを支払って生まれるパーソナルな市場=「周辺市場」が想定されるからだ。
被保険者が自ら積極的に健康維持のために投資を行う。この動きを狙った個人向け商品・サービスが活況を呈する可能性がある。
前出の田上氏は、このニーズに関して、「メタボ対策食品・サプリ、個人データ管理ツール、健康ゲーム、健康情報サイトなどが有望視されるだろう」と分析する。
ただ健康関連商品は、「nice to have(持っていたいもの)」ではあるが、「must have(持たねばならないもの)」になりきれないものだ。そこで付加価値をつけ、購買を促すことが求められる。そのために、「医師や専門家のノウハウを得て商品化する〝メディカルフィットネス・スパ〟や〝ドクターズコスメ〟といった商品・サービス群も注目される」(田上氏)。
企業側が個人に対し、メタボや健康を意識した〝新しいライフスタイル〟と消費を、いかに提案・アピールできるか。『周辺市場』の成長は、ここにかかっているようだ。
しかし、メタボ健診・指導が個人にもたらすインセンティブ(動機づけ)は少ないため、ニーズの喚起は難しいとの見方もある。
これは、個人と保険者(健康保険組合)と比べると明白だ。
保険者の場合、①健診、②保健指導の実施率、③メタボ減少率の3指標によって実施後5年間の実績が測定される。評価が高ければ2013年度スタートの「後期高齢者医療制度」の支援金負担額の減額(最大10%)が得られる。
反対に評価が低ければ、10%の負担増=罰則となる。どれだけの費用を出せば結果を出せるのかという「費用対効果」の点で不透明感はあるものの、「支援金負担額の多寡」というメリット・デメリットについては明確なのだ。
一方の個人にはそれがない。「メタボであれば不健康に、病気になる」という何とも漠然としたレベルに過ぎないとも言える・・・



