資産運用のエッセンスを学ぶ教科書として個人投資家に人気の
『投資戦略の発想法』(木村剛著)が、2年半ぶりにリニューアルされた。
その名も『投資戦略の発想法2008』。そこで、この著書の一部を
抜粋し、7つのポイントに分けてそのエキスを抽出した。
構成=FJ編集部

Prologue まず、そもそも…なぜ投資が必要なのか?
投資でヘッジする“日本リスク”
これからの日本において豊かな生活を維持していくためには、投資という経済行為の意味を理解することが不可欠です。
極めて残念なことですが、2006年に入った頃から、「資本主義経済とは何か」とか、「株式市場とは何か」とか、「利益の本質はどういうものなのか」ということを、政府や裁判所は理解しようとしていないことが明らかになってきました。低俗なマスコミと歩調を合わせて、「額に汗しないで儲けるなんてケシカラン」とか「安く買って高く売るという利益至上主義には慄然とする」と囃し立て、資本主義経済の法則に反する方向に日本を導こうとしているようにみえます。
もしも、日本が誤った方向に進んでいるのだとすれば、なおさら投資という経済行為の意味を学ぶことが重要になります。
良くも悪くも、わたしたちが勤めている会社は、「日本というフィールド」の影響から逃れることはできません。海外で外国企業に就職することはなかなか難しいことですし、日本語の通じない他国において自分のビジネスを展開するということは至難の業です。
しかし投資であれば「日本というフィールド」の影響を受けない外国企業の株や債券を買うことが可能です。また、日本経済が最悪の事態に陥った場合でもリターンが上がるようなヘッジを利かせたポートフォリオを組むことも可能です。
そうです――日本人であるわたしたちは、通常、日本政府や日本経済という枠組みの中で暮らすしかない環境に置かれています。しかし、投資という経済行為をマスターすれば、わたしたちはその束縛から脱して、自由を勝ち取ることができます。「投資戦略の発想法」を身に付ければ、仮に日本が危機に陥ったとしても、生活を維持するための財産を確保しておくことができるのです。
Point 1 バランスシートを作る
まず汝自らを知れ
さて、それでは「投資戦略の発想法」を習得するための講義を開始しましょう。ただし、その前に、答えていただかなければいけないことがあります。
それは、「あなたの財産はいくらありますか」という問いです。
「何なんだ?」と思われたかもしれません。投資の話が始まると思って、心の準備をしているのですから、「そんなことを聞いてどうするんだ」という反発がわき上がるのも当然です。それとも、「バカにするなよ。それぐらい答えられるよ」という反応でしょうか。
それでは、次の3つの質問にきちんと答えてみてください。
①あなたが保有している資産の現在価値はいくらですか。
②あなたが背負っている負債の総額はいくらですか。
③資産から負債を差し引いた純資産はいくらありますか。
ものすごくシンプルな質問です。しかしこの3つの質問に即答できる人は、意外と少ないものです。あなたは即答できたでしょうか。さらに、「保有資産や負債の存在を証明する書類をすぐに提示できますか」と聞かれたら、ほとんどの人が脱落してしまうのではないでしょうか。
即答できる人が少ないというのは無理もないように思います。預金は銀行、株や投資信託は証券会社、生命保険は保険会社といったように、取り扱っているところが別々の金融機関です。それらをまとめて1カ所で管理してくれる金融機関はいまのところありませんし、かといってそれらの資産をまとめて一覧表に書き出している人も少ないようです。つまり、現在の自分の資産や負債の状況を把握していないわけです。
手持ち資産の把握があいまいなのに、株式投資に関する専門知識ばかりを勉強している人が少なくありません。株以外の資産や負債の状況を知らないのに、デイトレーディングに熱中しているサラリーマンも多く見られます。何かアンバランスではないでしょうか。現時点の残高管理がしっかりできていないのに、投資という厳しい世界で成功を収めることができるのでしょうか。
まずは、自分の資産と負債を一覧表に書き出しましょう。それほど難しいことはありません。こんな簡単なことをやっていない人に、「投資戦略」を実践する資格はないのです。
Point 2 モニタリングする
「頭の体操」=「投資の修業」
資産と負債を洗い出すと、自分のバランスシートができます。その資産から負債の金額を差し引いた金額があなたの保有している純粋な資産(=純資産)です。
さて、バランスシートができたら、ようやく次の作業、モニタリングが始まります。定期預金を持っているなら、金利はどうなっているのか、外貨預金なら金利と為替がどうなっているのか、株なら株価はどうなのか、できれば月に1回程度チェックして、バランスシートの横に書き込んでおきます。やり方は自己流で結構です。長く続けられる方法を選びましょう。あまり凝りすぎると続きません。ただ、時間があれば、預金口座がある銀行の格付けや株式を購入した会社の経営状態について考えてみるのもいいと思います。
でも、ここで詳細に検討する必要はありません。今おカネを預けているA銀行の定期預金の利息は、B銀行よりも0・01%低いからB銀行に移し替えようか――などと考える必要などまったくありません。わずかな違いを気にするべきではないのです。
定期預金の利回りは低すぎるから少し株式投資を増やしてみようかな、国債でも買ってみようかな、などと頭の体操をしてみましょう。その程度で十分です。実際に資金を移さなくてもいいのです。自分の頭の中でシミュレーションをする、これを繰り返すことが、経済のメカニズムに対する大きな相場観や懐の深い投資マインドを育てていくことになります。
つまり、バランスシートをモニタリングするという作業を続けることは、投資の修業そのものだと言えるのです。修業なのですから、もうけそこなってもいいのです。小さな金額を移し替えることなどしなくてもいいのです。自分のバランスシートを管理することを通じて、生きた経済の勉強になればそれでいい――その程度の割り切りで根気よく続けていくべきなのです・・・



