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為末 大(ハードラー/ウェッジホールディングス社外取締役)インタビュー

ディズニーアニメのように
世界で愛されるコンテンツを日本から

陸上の世界選手権400メートルハードル銅メダリスト、為末大選手。
トラック競技の世界大会で2つもメダルを手にしたのは日本人で初めてだ。
投資に関する著書を出版するなど、トラックの外でも注目を集めている為末選手が、
コンテンツ制作会社を複数持つ「ウェッジホールディングス」の社外取締役に就任した。
株主総会で正式に承認された2007年12月、同社会長で
アジアパートナーシップファンド代表の此下益司氏とともに会見に応じた。

構成=FJ編集部 写真=鰐部春雄

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経済人ぶることなくあくまでアスリートとして

――取締役の打診を引き受けられたきっかけと理由は?
為末 2007年の秋に、此下会長(アジアパートナーシップファンド代表)から電話で打診されまして。お話をうかがったときは競技のことでいっぱいだったのですが、「競技にプラスになるのでは」と会長がおっしゃられて、なるほどと思ってお引き受けしました。
此下 彼は以前から「謙虚にならなければ」と自戒していて、「会長のかばん持ちをして……」というようなことを言っていた。ウェッジホールディングスに出資することになって、役員人事を考えたときに、すぐに彼のことがひらめいて、日本にいる彼のところにタイから国際電話をかけて頼んだんです。
為末 2005年くらいからの2年間は、社会的に成功が重なって、希望が実現しすぎて、どこかで独善的になっていたと思うんです。自分にはコーチがいないので、謙虚な姿勢を持つよう心がけていないとブレてしまう。
 以前は、技術的なアドバイスを受けるときも、自分の意見の裏づけをしてくれるような人を選ぶ傾向がありましたが、最近はいろいろな人の意見を聞くようになりました。
 今回の就任を、物事をより偏見なく見られるようになるきっかけにしたい。そう期待しています。

――取締役会で承認されたばかりの今の心境は?
為末 会社の経営にかかわるのは初めてなのでわからないこともありますが、自分が選ばれた理由は、陸上、ハードルというマイナーなスポーツをメジャーにする過程で得た経験があるからだと思っています。
此下 日本市場の成長性に限界があり、かつ国際的な競争もどんどん激しくなる現在、新興市場の企業にとっては、海外に進出し、生き残りをかけて活動を展開しなければいけません。彼の経験と実績は、当社や子会社が持つアニメコンテンツを海外で支持を広げるための起爆剤にできると思います。これから、マイナーなものも含めてコンテンツを海外にどんどん紹介していきたい。
 実は、社内的には彼の就任ですでにいい効果が出ています。制作会社で時間が不規則なので、疲れて寝ている社員もいるんですね。そうした現場を見た彼が激励のメッセージを社員宛にくれたんです。自分がこれまでに陸上競技で苦労した話などがつづられていたのですが、それを読んだ社員たちのモチベーションは以前よりぐっと高まっています。
為末 ウェッジ社はコンテンツの制作、販売会社を子会社に持っていますが、自分もマンガを読んで育った世代なので、日本発のコンテンツが世界で愛されるようになれば、これに勝る喜びはありません。世界中を転戦していて、5、6年前までは見なかった日本のマンガを、あちこちの空港で見かけるようになった。これがもっと広がれば……と思います。
 ディズニーのアニメだって、人気キャラクターのスヌーピーだって、生み出されてすぐは人気も認知度もローカルなものだったはず。それが今では世界規模で愛されています。そうしたことが、ウェッジホールディングスを中心にして起きればいいと願っています。
 また、株式会社の経営ということで、1年で結果を出す、ということが重要だと思っています。会社というものは、“愛されてナンボ”であるとも思う。「ないと困る」「あってよかった」という人が増えて、株主も増えるのが一番いいですね。社会貢献をすることも忘れたくないです。

――北京オリンピック前で時間が取れないのでは?
為末 たしかに時間的な制約は生じるかもしれませんが、走っているだけでは刺激が失われて、成長が止まってしまう。それは過去の経験から痛感しているんです。
此下 非常勤の社外取締役なので、月1回の取締役会への出席が基本です。合宿などで遠方にいる場合も、電話会議や電子承認のシステムを使うことで対応できます。

――ビジネスに積極的なアスリートといえば、サッカーの中田英寿氏が知られていますが、何か教えを乞うとか、意識するということはありますか?
為末 まず、中田さんが今どこにいるのかよく知らないですし、つかまえられないので(笑)。
 取締役会は緊張しましたが、物事はいろいろな角度から見なければいけないと思います。自分は経営の勉強はしていませんが、変に経済人ぶるのではなく、スポーツプレーヤーとしての経験、視点を大事にしたい。それを買われたのだと思いますし。

――スポーツエンターテインメント企画推進室が設置されましたが、ここではどんな事業を予定しているのですか?
為末 スポーツビジネスももちろんですがスポーツは結果がすべて。結果が出ないと注目されませんし、顧みられることもない。マイナー競技はオリンピックで勝てなかったら、次回のオリンピックまでずっと日が当たらないまま。
 しかし、オリンピックを支えているのは、なかなか人目に触れることのない、マイナーな競技たちです。
 そこで、まだ具体的ではないのですが、ウェッジホールディングスとして、マイナー競技のDVDを制作して、子どもたちにその面白さを伝えられたら・・・

続きはFJ3月号で



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