
「談合封じ」に挑んだ地方の挑戦
「談合が摘発された」というニュースは絶えることがない。
しかし、公共事業は変えられる。安く質のよい工事を実現した
地方の取り組みから、改革の可能性を探ってみよう。
繰り返される
公共事業での官民の癒着
「そんな発言はしていません」。守屋武昌前防衛事務次官は、今年10月29日の衆議院での証人喚問で、防衛専門商社「日本ミライズ」を航空機エンジン納入業者に指名する「随意契約」を主張したとの疑惑に答えた。しかし、同社社長との間で11年の間に200回以上の接待ゴルフを共にした癒着関係が明らかになり、否定とは裏腹に、疑惑は広がっている。
松岡利勝農水大臣(当時)が今年5月28日に自殺した。死の衝撃で追及はうやむやになったが、いくつもの疑惑が松岡氏にはささやかれた。農水省の外郭団体で、土木工事を取り仕切る「緑資源機構」による談合問題で、東京地検特捜部は5月24日に関係者を逮捕。松岡氏は同機構と密接な関係を持ち、談合に絡んでいた会社から政治献金を受けていた。
官庁で権限を持つ人物が、民間業者と密接な関係を持ち、公共事業を「食い物」にする。こうした構造が日本には残る。そして、民間業者も癒着や談合を行って利益を得てきた。守屋・松岡両氏と、それにかかわった民間業者の姿は特別なものではないだろう。
私たち納税者は税金の無駄遣いに怒りを覚える。同時に、こうした官民の癒着や談合が繰り返されることにあきらめも感じる。問題を正すことはできないのか。
しかし、公共事業を変えた人々がいる。
当初予算から
14%も工事費が減額
佐賀市立高木瀬小学校。一見すると、どこにでもある小学校だ。しかし、この小学校は04年に建設工事費を大幅に引き下げて建てられ、全国的に注目された。当初の建設予算は、7億1581万円。それが6億973万円で着工された。金額にして1億608万円、率にして14・8%の減額だった。さらに建設中も設計改善によって、工事費が減った。
公共事業では、一度予算が決まると、それを使い切るのが当たり前だ。また、談合によって価格がつり上げられることも多い。学校建設をめぐる佐賀市の落札率(次頁コラム参照)が約95%前後だったことを考えれば、予算の約85%で作られたのは、驚くべき成果だ。
民間建設会社の希望社(本社岐阜市)が工事発注におけるコンサルティングを行ったことが、工事費削減の理由だった。官と地元業者による閉ざされた公共事業の内側に、中立な民間企業が入ったことも異例だ。
希望社は「談合しない」「建築費は2割前後安くなる」を掲げながら、「JCM(日本型建設マネジメント)」と名付ける手法を提案する。桑原耕司会長によれば、3つの特長がJCMにはあるという。第1に、建築費の内容を透明にして、建築主に開示する。第2に、建築費を競争的なプロセスを用いて引き下げる。工事の工程を細かく分け、技術力とコスト競争力を見極めながら、工事に参加する業者を選ぶ。第3に、建築の目的を明確にし、その実現のために「品質」「機能」「コスト」を明確にする。そのため建築主の意向をとことん聞くというものだ。「普通の産業では、当たり前のことかもしれません。しかし、建設業界ではそれが行われてきませんでした」と桑原会長は話す。
希望社の参加を03年に決めたのは、前市長の木下敏之氏だ。1999年に就任した木下氏は日本経済新聞が行っている全国市行政改革革新度ランキング(全国700市)で、98年度に350位だった佐賀市を、2004年度には全国13位まで躍進させるなど、創造性に富んだ市長だった。
この小学校の入札で談合が行われていたという事前情報が入り、入札は中断。木下氏自らが、建設の見直しを進める中で、希望社の手法に注目した。「安くて良質で子供たちのためになる建物ができました。その結果、使える教育予算を増やせたのです」と、木下氏は当時を振り返る。
最初に業界は反発
下請けはやがて歓迎
希望社の参加に当初、地元の建設業界は反発した。通常の公共工事では、入札を行って、そこで最低価格を出した業者が受注。その業者が元請けになり、下請けへの発注はそこに委ねられる。
だが希望社の提案は、通常の公共工事の入札とは異なった。工事での工種を細分化し、元請け業者だけでなく、下請け業者となる専門工事会社やメーカーからも見積りを徴収。「CMR(コンストラクション(建設)マネージャー)」という事業をコントロールする立場にいる希望社が、技術力を調べた上で、コスト競争力に優れた会社を選定した。
当初、元請け業者から出された見積もりの総額は、ほぼ市の予定価格と同じ。「高く請け負って、利益を出そうとしていたのでしょう」(桑原氏)。しかし希望社の方式では、選定した会社の見積りが元請け業者の見積りより低い場合は、下請け業者の入れ替えが行われ、建設費が減った。
見直し作業を進めると、「元請け」となる地場ゼネコンが談合をしていた形跡が随所にあった。ある社の担当者は、説明会で質問した。「元請けが1社しか見積もりに参加しない場合はどうなるのか」。これでは「談合して受注先が決まっている」と自ら告白したようなものだ。一方で、下請けは当初は元請けに遠慮して積極的に参加しなかったが、系列に関係なく、よい提案をすれば仕事がとれることがわかると、熱心になった・・・



