
取材・構成=石井孝明 写真=韓国観光公社
輸出で成長を遂げた韓国は今、岐路に立っている。
「際立った強みがない」という産業の特徴ゆえに、国際競争で勝ち残れるかとの懸念が広がっているのだ。
「サンドイッチ」への危機感
韓国企業についての小話がある。
「3軒の店が並んでいた。ある店の主人が『最安値』と看板を掲げると、そこにお客が集まった。しばらくすると、もう一つの店の主人は『最高品質』と看板を掲げ、一部のお客はそこに流れた。そして、間に挟まった店の主人は『入り口はこちら』という看板を掲げて、最後に笑った」。
つまり、価格の安さを強調する中国などの発展途上国や、質を強調する日米などの先進国から「いいとこ取り」をして製品を作り、したたかに生き残るという特徴を表したものだ。
しかしこの行動は逆に、「際立った強み」がないとの弱さも生んだ。
韓国の経済界では今、「サンドイッチ状態」という言葉が頻繁に聞かれる。低コストの中国、そして技術力を持つ日本に挟まれ、国際的に存在感がなくなるとの意味だ。
韓国の最大財閥であるサムスングループの李健熙会長は3月、サムスン電子の主力業種での収益率低下に触れた後で、「サムスンだけでなく、韓国全体が困難に陥っている。早く目を覚まさなければ、5~6年後には混乱に満ちた状況が訪れるだろう」と警告した。
1997年の経済危機の影響はなくなったものの、5%とされる潜在成長率を上回るGDP(国内総生産)の伸びは近年ない(図1)。
携帯電話、半導体、自動車、鉄鋼、造船という韓国の「5大主力産業」のいずれでも、国際シェアが伸び悩む。さらに昨年から続く韓国の通貨ウォンの対米ドル、対円での上昇で、国際競争力が低下している(図2)。

別の道はあるのか模索する韓国企業
こうした危機感を背景に、韓国の経済界は「次の一手」を探している。
「高付加価値産業の育成と産業構造の高度化。これが官民のコンセンサスになっています」と日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部中国北アジア課の百本和弘氏は指摘する。韓国政府はIT分野などでの10大次世代成長動力産業を指定し、成長をサポートする意向だ。
しかし産業構造の転換は、すぐに行えるものではない。そして転換に障害となるさまざまな問題も韓国は内包している。中でも産業界で「二極化」問題が顕在化している。大企業と中小企業の技術力や経営資源の格差が問題になっているのだ。
サムスン電子、LG電子、鉄鋼のポスコ、現代自動車など世界的に有名な企業が韓国には数多くある……



